太陽光発電の設置費用はいくら?相場や費用の内訳を解説
温室効果ガスの排出による地球温暖化や燃料価格の高騰による電気代の値上げといったさまざまな問題が取りざたされている近年、太陽光発電の導入・設置が非常に注目されています。東京都では、2025年4月から新築住宅への太陽光発電システムの設置が義務化されました。
出典:東京都「2025年4月から太陽光発電設置義務化に関する新たな制度が始まります」
しかし、太陽光発電の設置には多額の費用が発生します。条件によっては補助金も受けられますが、その場合でもまとまった資金が必要となることを覚えておきましょう。
今回は、太陽光発電の平均的な設置費用や設置後にかかる費用など、お金にまつわる情報を徹底紹介します。太陽光発電に必要な設備や設置費用を抑える方法も解説するため、ぜひ最後までご覧ください。
太陽光発電の設置費用の相場は?
太陽光発電の設置には、多額の費用が必要です。まずは、太陽光発電の平均的な設置費用を事業用と家庭用に分けて紹介します。
【事業用太陽光発電(産業用太陽光発電)の設置費用相場】
2021年 | 30.2万円/kW |
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2022年 | 29.4万円/kW |
2023年 | 27.9万円/kW |
上記は、「地上設置・屋根設置を含む10kW以上の事業用太陽光発電全体」における設置費用の推移です。2023年データにおいては、同年8月末時点に報告された資料にもとづいて記載したものとなっていますが、設置費用は年々低減していることが分かります。
【家庭用太陽光発電(住宅用太陽光発電)の設置費用相場】
2021年 | 27.5万円/kW |
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2022年 | 27.4万円/kW |
2023年 | 28.4万円/kW |
上記は、「既存住宅・新築住宅を含む家庭用太陽光発電全体」における設置費用の推移です。事業用太陽光の設置費用は年々低まっている一方で、2023年度の家庭用太陽光の設置費用は2022年度より増加していることが分かります。
太陽光発電の設置にかかる費用の内訳
太陽光発電の設置費用の内訳は、大きく「システム費用」「設置工事費用」「諸費用」の3つに分けられます。
●システム費用
太陽光発電の設置に必要となる装置や設備の費用です。設置容量やメーカーなどによって販売価格は大きく異なります。
●設置工事費用
太陽光発電の取り付け・配線工事に対してかかる費用です。設置場所や工法などによって費用は大きく異なります。
●諸費用
太陽光発電の導入時に行う申請や手続き、またはこれらを代行したときに発生する費用です。太陽光発電の導入手続きには専門的な知識が必要となるため、代行を依頼するのが一般的です。
太陽光発電を設置した後にかかる費用
太陽光発電の設置にかかる費用は、システム費用や設置工事費用といったイニシャルコストだけではありません。太陽光発電の設置後も、下記のようなランニングコストが発生します。
- 点検費用
- 修理費用
- 清掃費用
- 保険料
- 税金
ここからは、それぞれの費用について詳しく説明します。
点検費用
点検費用(メンテナンス費用)とは、名前の通り太陽光発電の点検・メンテナンス作業に対して発生する費用です。太陽光発電パネルの枚数や点検業者、点検内容によっても異なるものの、「1回あたり約1万~3万円」が相場となっています。
太陽光発電は、4年に一度の定期点検の実施が推奨されています。あくまで努力義務であり強制ではありませんが、故障やトラブルを防ぎつつ安定した発電効率を保つためには必要なコストと言えるでしょう。
修理費用
修理費用とは、太陽光発電システムが何らかの原因で故障・破損してしまった場合に発生する費用です。
主な太陽光発電システムには「ソーラーパネル」「パワーコンディショナー」「電力量計(売電メーター)」の3つがあります。それぞれの修理・交換費用は、下記の通りです。
ソーラーパネル | 約7万~/枚 |
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パワーコンディショナー | 約3万~10万円 |
なお、基本的に太陽光発電システムはそれぞれメーカーや業者による保証期間が設けられます。保証期間内に不具合が生じた場合は無償で修理してくれますが、期間外の場合は実費での対応が求められることを覚えておきましょう。
特に雨風など外部からの影響を受けやすいソーラーパネルは保証期間外の修理費用が高額となるため、定期的な点検や清掃が重要です。
清掃費用
清掃費用とは、太陽光発電システムの清掃を専門業者に依頼した際にかかる費用です。
ソーラーパネルをはじめとした太陽光発電システムは、住宅の屋根をはじめとした屋外に設置されるため、雨風や鳥のフン、土埃などの汚れが蓄積しやすくなっています。汚れが蓄積していると発電効率が低下してしまうので、定期的な清掃が欠かせません。
清掃作業は自身でも行えますが、屋根設置の場合は高所作業となり、危険がともないます。また、かえってパネル表面を傷付けてしまう可能性もあるため、専門業者へ依頼することが基本となっています。
依頼した場合の清掃費用は業者によっても異なるものの、「基本料金約5万円+パネル清掃は1枚あたり約500~1,000円、除草作業は1平方メートルあたり100~150円程度」といった内訳が多くなっています。
保険料
保険料とは、地震や台風といった自然災害への備えとして加入する保険に対して発生する費用です。日本は予測不可能な自然災害が多々発生する国であることから、太陽光発電に対する地震保険や火災保険に加入する方も少なくありません。
メーカーによる無料保証では、災害・事故によって起きた損害に対する補償は対象外となっており、万一の損害を補償してもらうためには保険に加入する必要があります。
保険料は保険の種類によって異なりますが、地震保険の場合は太陽光発電の初期費用の1%程度、火災保険の場合は初期費用の3%程度が相場です。保険の加入は義務ではなくあくまで任意ではあるものの、万一の損害に備えるための必要なコストと言えるでしょう。
税金
太陽光発電システム導入後は、自宅の電気代を削減できたり売電できたりと家計にうれしい効果が得られる一方で、同時に税金も発生します。太陽光発電のランニングコストとして発生する税金には、大きく「所得税」と「固定資産税」の2つがあります。
所得税とは、余剰電力の売電によって得た所得に対して発生する税金のことです。しかし、所得税が発生するのは売電収入が年間20万円以上を超えた場合のみであるため、基本的に10kW未満となる家庭用太陽光発電では多くのケースで課税対象外となります。
出典:国税庁「自宅に設置した太陽光発電設備による余剰電力の売却収入」
そして固定資産税とは、土地や住宅、償却資産といった固定資産に対して発生する税金です。太陽光発電設備は10KW以上の出力がある場合、固定資産(償却資産)としてみなされるため、評定額と税率に応じた固定資産税を支払わなければなりません。
太陽光発電に必要な設備
発電機能に直接かかわる基本的な設備は、太陽電池パネルとパワーコンディショナーの2種類のみです。しかし、発電効率を高めたり発電電力を効率よく活用したりするためには、その他さまざまな設備も重要となります。
ここからは、太陽光発電に必要な設備を8つ、それぞれ概要や役割とともに詳しく説明します。
太陽電池パネル
太陽電池パネルとは、太陽光を電気に変換する発電装置です。いわば太陽光発電システムの中核をなす機器であり、「ソーラーパネル」「太陽光パネル」とも呼ばれています。太陽光が当たらなければ発電できないため、屋根の上など日当たりのよい場所に設置されます。なお、太陽光のない夜間は発電できません。
パネル1枚ごとに「W」または「kW」という単位で発電出力が設定されており、家庭用太陽パネルの出力は1枚あたり約100W~250Wが一般的です。例として、200Wの太陽電池パネルを20枚並べた場合の総出力は4kW(4000W)となります。
架台
架台とは、太陽電池パネルを固定したり、高さや角度を調整したりするための金属製の部材です。太陽電池パネルは、日光の当たる量と当たり方によって発電効率が変化します。高さや角度を適切に調整できる架台は、発電効率を高めるために欠かせない設備と言えるでしょう。
架台の素材は、ステンレスやアルミが主です。重圧感のあるステンレス製は錆びに強く耐久性も優れていますが、費用が割高となります。一方のアルミ製は軽量かつ加工が容易で費用も安価ですが、強度はステンレス製よりも劣ります。
住宅の屋根の種類や形状、さらに設置する地域によって架台の適切な固定方法が変わったり、特殊なアタッチメントが必要となったりします。固定方法によって、設置費用が変動することも覚えておきましょう。
接続箱
接続箱とは、太陽電池パネルで変換した電気をパワーコンディショナーに送るための装置です。内部には太陽電池パネルとパワーコンディショナーをつなぐ配線がまとめられており、この配線を用いてパワーコンディショナーに発電電力を送ります。
接続箱は、屋外の「太陽電池パネルとパワーコンディショナーの双方からなるべく近い場所」かつ「風通しがよく直射日光や雨水などがなるべく当たらない場所」に設置されることが基本です。
近年では、接続箱とパワーコンディショナーが一体化した製品も開発・販売されています。
パワーコンディショナー
パワーコンディショナーとは、太陽電池パネルで発電した電気を自宅で使用できるように変換するための装置です。
太陽電池パネルで発生させられるのは「直流」という方式の電力ですが、家庭で使用される家電製品の多くは「交流」という方式の電力に対応しています。直流電力を交流電力に変換できるパワーコンディショナーは、太陽光発電に不可欠な装置と言えます。
家庭用パワーコンディショナーはエアコンの室外機程度のサイズ感となっており、室内設置タイプと室外設置タイプの2種類があります。室外に設置する場合、外気や雨水によって経年劣化しやすくなるため定期的な清掃が必要です。
分電盤
分電盤とは、パワーコンディショナーなどで変換・入力された電力を複数の回路に分割し、家庭内の照明やコンセント、家電製品に供給するための装置です。
「ブレーカー」「ブレーカーボックス」とも呼ばれる分電盤は、太陽光発電導入の有無を問わずどの建物にも設置されています。
したがって、既存住宅に太陽光発電を導入する場合であっても、分電盤を新たに設置したり交換したりする必要はありません。しかし、パワーコンディショナーからの電力を引き込むための「分電盤内の配線工事」が必要となることを覚えておきましょう。
電気メーター
電気メーターとは、買電量または売電量を計測するための「電力量計」のことです。
買電量を計測する電力量計は、太陽光発電の導入の有無を問わず基本的にどの建物にも設置されていますが、太陽光発電を設置し余剰電力を売る場合は、売電量を計測するための電力量計を新たに設置することとなります。
太陽光発電システムによる発電量を計測するための「総発電量メーター」を設置するケースもあります。
カラーモニター
カラーモニターとは、太陽光発電システムによる発電状況や消費電力量、さらに電力会社への売電量や蓄電池の状態などをまとめて表示するための機器です。
基本的に太陽光発電システムの一式として含まれていますが、メーカーによってはオプションとなる可能性もあります。
蓄電池
蓄電池とは、太陽電池パネルとパワーコンディショナーで発電・変換された電力を蓄えておくための設備です。蓄電池で蓄えておいた電力は、時間を問わず自由に使用できます。
太陽光の当たらない夜間に使えば電気料金の節約につながるほか、自然災害などによって停電が起きた際の非常用電源として確保することが可能です。
蓄電池は太陽光発電に必須の設備ではなく、オプションの追加を希望して設置する形となりますが、「自家発電した電力を効率よく使いたい」と考えて導入する方が非常に多くいます。
太陽光発電の設置費用を抑えるためには?
太陽光発電の導入にあたっては、まとまった初期費用が発生します。しかし、工夫次第ではコストを抑えることも可能です。
ここからは、太陽光発電の設置費用を抑えるためにできる工夫を3つ、それぞれ詳しく紹介します。
業者選びを慎重に行う
太陽光発電の設置費用を抑えるための最も重要なポイントが、「慎重な業者選び」です。業者選びの際は、必ず複数の業者から見積もりをとって、比較・検討を進めましょう。
また、太陽光発電はメーカーやシステム容量によって設置費用も大きく異なります。相見積もりをとるときは、できる限り同じ条件で見積もってもらうことが大切です。
なお、見積額が最も安い業者が最もよいわけでもありません。安すぎる場合は保証が薄く、メンテナンスや修理によってむしろ費用負担が重くなる可能性もあります。したがって、業者選びの際は見積額だけに着目せず、実績や施工内容、保証内容などもあわせて総合的に判断することがおすすめです。
発電効率のよい太陽光パネルを選ぶ
太陽光パネルは太陽光発電の設置費用の大部分を占めるので、できる限り安価な太陽光パネルを選ぶ方も少なくありません。
しかし、価格だけを気にしていると、住宅との相性が悪く発電効率の低い太陽光パネルを選んでしまうおそれがあります。発電効率が低ければ電気料金の削減効果は期待できないほか、余剰電力がそもそも生まれず、売電すらできないという可能性もあるでしょう。
いくらイニシャルコストを抑えられたとしても、太陽光発電による効果を得られなければ意味がありません。価格はもちろん変換効率とのバランスも踏まえて総合的に判断し、コストパフォーマンスに優れた太陽光パネルを選ぶことが大切です。
補助金を利用する
太陽光発電の設置価格を抑えるためには、補助金の活用も一案です。
かつては、太陽光発電の導入数を増やすために「太陽光発電の設置」を対象とした補助金制度が国により実施されていました。しかし現在では、太陽光発電の設置のみを対象とした補助金制度は終了しています。
とは言え、自治体単位であれば太陽光発電の設置で補助金を受けられる場合もあります。また、国からは太陽光発電に加えて蓄電池の設置など、「省エネ・創エネの実現を目指した住宅」に対する補助金制度が新たに制定されています。
「2035年までの温室効果ガス排出削減目標」が世界的に掲げられていることもあり、こうした補助金制度は今後も続くと言えます。制度によっても条件は異なるため、あらかじめ確認しておきましょう。
太陽光発電の設置費用はどの程度で回収できる?
太陽光発電の設置には多額の費用がかかるものの、基本的に設置費用は電気料金の削減分や余剰電力の売電収入によって回収できるとされています。そこで気になるのが、「どのくらいの期間で元が取れるのか」という点でしょう。
太陽光発電の設置費用がどのくらいで回収できるかはいくつかの要因によって異なりますが、おおよその回収期間は主に「年間の発電量・売電率」と「売電価格」から算出可能です。
下記に、100万円の設置費用がかかった4kWの太陽光発電を例に、おおよその回収期間の算出方法を順に沿って分かりやすく紹介します。
(1)前提情報 | 年間発電量 | 4,800kWh ※年間日照時間:1,200時間 |
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年間売電率 | 約70%(3,360kWh) | |
再生可能エネルギーの買取価格(※1) | 16円 ※2024年度以降の1kWhあたりの調達価格 | |
(2)年間売電収入の算出 | 53,760円 ※エネルギー買取価格(16円) × 年間売電量(3,360kWh) | |
(3)設置費用の回収期間の算出 | 約18.6年 ※設置費用(100万円) ÷ 年間売電収入(53,760円) |
※1出典:経済産業省 資源エネルギー庁「買取価格・期間等(2024年度以降)」
太陽光パネルの耐用年数は20年程度あるため、耐用年数内でのコスト回収は十分に可能と言えるでしょう。
しかし、上記は1kWhあたりの電気代を考慮していません。加えて、パワーコンディショナーは10~15年に一度の交換が推奨されている点を踏まえると、太陽光発電にかかった総合的なコストの回収期間は耐用年数ギリギリになってしまうケースもあります。
また、基本的に太陽光パネルの枚数が多いほど1kWあたりの単価が安くなり売電収入も増えるため、回収期間が短くなる傾向です。
まとめ
太陽光発電の設置にかかる費用相場は、事業用太陽光発電で1kWあたり27.9万円、家庭用太陽光発電で1kWあたり28.4万円です。基本的に、太陽光パネルの枚数が多いほど1kWあたりの単価は安くなります。
太陽光発電の導入費用をなるべく抑えるためには、販売店や設置業者を慎重に選ぶほか、発電効率のよい太陽光パネルを選んだり、補助金を活用したりすることもポイントです。
太陽光発電の設置費用は、約15~20年ほどの期間をかけて回収できます。できる限り早い段階で回収するためにも、販売業者と太陽光発電設備をじっくり比較・検討して選びましょう。