非FIT電気とは?概要やFIT電気との違いをわかりやすく解説

2024.08.05
再生可能エネルギー用語解説
非FIT電気とは?概要やFIT電気との違いをわかりやすく解説
非FIT電気は、FIT制度の認定を受けていない再生可能エネルギー発電設備から生産された電気を指します。FIT制度に依存しないため、柔軟な運用が可能で、企業や自治体にとってさまざまなメリットがあります。 当記事では、非FIT電気の概要、FIT電気との違い、メリットとデメリット、非化石証書の意味、そして導入事例について詳しく解説します。実際に非FIT電気の導入を検討している方は、非FIT電気の理解を深めるためにもぜひ参考にしてください。

非FIT電気とは?

非FIT電気とは、再生可能エネルギーの発電設備の中でも、FIT制度による認定を受けていない電気を指す言葉です。非FIT電気は、非FIT太陽光発電やNon-FITと呼ばれることもあります。 ここでは非FIT電気について分かりやすく解説します。まずは非FIT電気の基礎的な知識を深めましょう。

FIT電気との違い

非FITは、FITの対義語です。FITは、FIT制度による認定済みの再生可能エネルギーの発電設備を指します。非FIT電気とFIT電気で大きく異なる点は、発電後の用途です。 FIT制度の認定を受けた電気は、一定の価格で電力会社に売る仕組みです。非FIT電気は、市場価格で売却や自家消費されます。 また、FITの費用は国民が一部負担しており、二酸化炭素の排出抑制・省エネといった環境価値は国民に帰属することから、FIT電気自体には付加されません。そのため、FIT電気は100%再生可能エネルギーと見なされません。一方、非FIT電気は省エネ賦課金を利用しないことから、100%再生可能エネルギーと見なされます。

そもそもFIT制度とは?

非FIT電気およびFIT電気への理解を深めるためには、FIT制度に対する理解が欠かせません。 FIT制度(固定価格買取制度)は、制度に基づいて認定された設備で発電した電気を、期間限定で固定価格での買取を保障する制度です。FIT制度では、買取事業者として電力会社が指定され、電力会社は国から買取を義務付けられています。 FIT制度は、再生可能エネルギーの普及を促進し、国のエネルギー自給率を向上させることを目的とした制度です。国が発電した電気を確実に買い取れるルートを確立し、発電設備を設置した発電事業者や家庭に対して導入コストの回収をサポートします。 FIT制度のあり方は、制度開始から改正を経て変化しています。FIT制度は、制度スタート当初の2009年時点では余剰売電制度として、太陽光設備の余剰電力を対象に買い取っていました。 2012年からは全量売電制度に移行し、現在は発電した電気すべてを国が定めた固定の価格で売れるようになりました。太陽光発電による電気だけでなく、風力発電・水力発電・地熱発電・バイオマス発電による電気も買取対象です。 FIT制度の電気の買取価格は国が定めています。発電設備によって買取期間が異なり、住宅用太陽光発電であれば10年間です。

また、FIT制度の原資の一部は、国民が負担する再エネ賦課金です。再エネ賦課金は、電気使用者が電気料金の一部としてそれぞれの電力使用量に応じた金額を負担します。

出典:経済産業省 資源エネルギー庁「制度の概要|FIT・FIP制度」

非FIT電気のメリットとデメリット

FIT制度は2019年に開始から10年を迎え、FIT制度による買取が順次終了しています。その中で、非FIT電気は卒FIT電源や国民負担に頼らない電力として注目を集めるようになりました。 非FIT電気には、FIT電気とは異なるメリットやデメリットがあります。

非FIT電気のメリット

非FIT電気のメリットは次の通りです。
税負担やペナルティを軽減できる
日本は世界各国と比較すると、二酸化炭素の排出量に対して税負担やペナルティが小さいものの、今後負担が大きくなる可能性があります。非FIT電気を導入すると、特に企業では二酸化炭素排出に関する税負担軽減などのメリットを得られるでしょう。
光熱費を節約できる
非FIT電気は、必ず電力会社に売るわけではなく、発電分を自家消費できます。自家消費することで、光熱費を節約し、エネルギー高騰の影響を抑えられます。
FIT電気より高く売れる可能性がある
FIT電気は国が定めた固定価格で買い取られるため、下限の買取価格が保障される一方で、それ以上高い価格では売れません。非FIT電気は市場価格で売ってもよく、市場価格によってはFIT電気より高い価格で売れる可能性もあります。
非FIT電気は、制度の規制を受けず柔軟に運用できる点がメリットです。

非FIT電気のデメリット

非FIT電気固有のデメリットは、次の通りです。
取引相手を自分で探す必要がある
FIT電気の場合、電気を買い取る事業者が決まっており、売却に必要な手続きまで自動的に完了します。非FIT電気には売電先などの制限がない代わりに、取引相手探しから手続きまでを自分で行う必要があります。
電気の買取価格が変動するリスクがある
FIT電気の買取価格は固定です。値上げができない代わりに、最低の買取価格が保障されています。一方、非FIT電気は市場価格の影響を受け、市場価格が下落すると買取価格も下落します。売電収入を見込んでいる場合は、利益が大幅に落ち込む可能性を考慮しましょう。
非FIT電気は、制度に縛られない一方で、制度による保護を受けられない点がデメリットとなります。

非FITにおける非化石証書とは?

非化石証書とは、非FIT電気の環境価値を証明する書類です。非FIT電気は制度によって価値の保証を受けておらず、二酸化炭素を排出せずに生産した電気であると示すためには非化石証書が必要です。 非化石証書には次の3種類あります。
  • FIT非化石証書(再エネ指定あり)
  • 非FIT非化石証書(再エネ指定あり)
  • 非FIT非化石証書(再エネ指定なし)
非FIT型で再エネ指定がないものには、原子力発電も含まれています。また、脱炭素の電力として価値が認められるのは、再エネ指定ありの非FIT型証書です。 発電事業を展開する中で、さらに環境価値が高い電気であると証明するには、RE100への加盟も大切です。RE100への加盟には、FITトラッキング付きの非化石証書を発行する必要があります。FITトラッキング付きの証書は発電元の情報まで追跡しており、基準が厳しい一方で高い環境価値を示せます。

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非FIT電気導入の事例

FIT制度や非FIT電気の概要を知るだけでは、導入後のイメージがつかない人も多いでしょう。全国のさまざまな企業や組織が非FIT電気を導入しています。ここでは、実際に非FIT電気を取り入れた事例を紹介します。
不動産会社での事例
大手不動産会社で、2019年にRE100に加盟し、2020年から非FIT設備の開発を開始した事例です。当該企業ではグループ内の小売電気事業者を通じ、自社で生産した非FIT電気を複数の自社ビルの電気に供給しています。 今後の展開として、2025年までに自社保有設備のエネルギーをすべて再生可能エネルギーに置き換えることを目標としています。
新潟県の事例
新潟県が発電施設を非FIT化し、収益増加を図った事例です。新潟県では2015年度から、すでにFIT発電所として認定を受けていない水力発電所を非FIT化し、自治体の一般競争入札を活用して売電を行っています。取引相手を探しにくい非FITのデメリットを、自治体の入札でカバーした好例です。

出典:新潟県「新潟県企業局経営戦略」

上記のように、非FIT電気は一般企業から自治体まで、幅広い組織で活用できます。非FIT電気を売却して収益につなげるのも1つの方法ですが、生産・消費するだけでも組織のイメージアップにつなげられるでしょう。

まとめ

非FIT電気は、FIT制度に依存しない柔軟な運用ができることから、企業や自治体にとって有利な選択肢です。市場価格で売却できるため、状況によっては高い収益を期待でき、自家消費によるコスト削減も可能です。 しかし、取引相手の探索や市場価格の変動リスクを考慮する必要があります。非化石証書による環境価値の証明も重要であり、企業のイメージアップに貢献します。非FIT電気の導入は、持続可能な社会の実現に向けた一歩となるでしょう。