デマンドレスポンスとは?種類や仕組みをわかりやすく解説
2024.05.08
コスト削減用語解説
デマンドレスポンスとは、電力の需給バランスを調整するために、電力消費者が電力使用量の制御に協力することです。節電やピークシフトに協力することで、逼迫する電力の需給バランスに対応します。
この記事では、デマンドレスポンスの必要性や種類、仕組みについて、詳しく解説します。また、デマンドレスポンスのメリット・デメリットについても取り上げるので、デマンドレスポンスの詳細に関して理解を深めたい方は、ぜひ参考にしてください。
デマンドレスポンスとは?
デマンドレスポンス(Demand Response)とは、電気の需要(消費)と供給(発電)のバランスを調整するために、消費者が電力使用量を制御することです。略称は「DR」で、日本語では「需要応答」と訳されます。
需要家(電力を使う企業や一般家庭)が日常的に利用する電気は、基本的には蓄えることができません。そのため、電力の需要と供給を一致させ続けるためには、効果的な調整が必要です。
各電力会社は電気の使用量の予測に基づいて発電量を調整し、電力システムの需給バランスを保っています。
例えば、需要抑制の手段として、デマンドレスポンスの代表的な手法には「節電」があります。需要家が照明や空調、その他の機器・設備の利用を調整したりストップしたりする行動で、需要を抑制する方法です。
また、生産設備の動作時間を電力需要の少ない時間帯に動かす「ピークシフト」や、蓄電池に充電しておいた電力を需要の多い時間帯に利用する「放電」などの手法もあります。
デマンドレスポンスの必要性
デマンドレスポンスは、電力需給バランスの安定化のために必要です。電気の安定供給を保つには、発電量と電力消費量が同じくらいになっていることが大切です。
需要量と供給量が一致せずにバランスが崩れた場合、電気の品質(周波数)に乱れが生じ、正常な供給が妨げられる可能性があります。
従来は、電力の安定供給を保つ方法として、需要に供給を合わせる取り組みが一般的でした。しかし、太陽光発電や風力発電などの再生可能エネルギーの導入により、供給量の変動が大きくなりました。
再生可能エネルギーは、天候などの条件によって発電量が変動します。そのため、急な電力需要に火力発電のように対応することは難しく、供給側バランスに影響を与えます。
このような背景から、供給力に需要を合わせるデマンドレスポンスが重視されるようになりました。
デマンドレスポンスの種類
デマンドレスポンスは、電力需要を増やすか減らすかという需要制御のパターンによって、「上げDR」と「下げDR」の2種類に分けられます。以下では2種類のデマンドレスポンスについて解説します。
上げDR
上げDRとは、電力需要を増やすことで電力供給とのバランスを調整する仕組みです。電力供給が需要を上回るときに発動します。
電気の使用が少ない時間帯に需要側が使用量を増やすことで、電力需給バランスの維持が可能です。
上げDRの実施手法には、蓄電池や電気自動車の充電、電化製品の使用などがあります。例えば、再生可能エネルギーの発電量が予測を上回り電気が余った場合、需要家が蓄電池を充電したり電化製品を動かしたりして電力使用量を増やすことで余剰電力を消費できます。
下げDR
下げDRとは、電力需要に対して供給量が不足している状況で発動する仕組みです。
電力需要が供給量を上回ると、需給バランスが崩れ、停電などの問題が生じるおそれがあります。電力需給のバランスが崩れる事態を防ぐために、下げDRが取り入れられます。
具体的には、電力需要がピークに達したときに、無理のない程度で空調機器や照明器具の使用を制限するのも下げDRの方法の1つです。また、蓄電池の電気を優先して使うよう需要家に要請することで、消費電力の使用量を効果的に抑制できます。
デマンドレスポンスの2つの仕組み・方法
デマンドレスポンスには、需要制御の方法として「電気料金型」と「インセンティブ型」の2つの主要な仕組みがあります。ここでは、電力需要と供給のバランスを調整する2つの仕組みについて紹介します。
電気料金型デマンドレスポンス
電気料金型デマンドレスポンスとは、ピーク時の電力需要を抑制するために、ピークになる時間帯の電気料金を電力会社が引き上げる方法です。電気料金型デマンドレスポンスの仕組みのメリットは、適用が比較的簡単なことです。
ただし、電気料金型デマンドレスポンスにはいくつかの課題点も存在します。例えば、ピーク需要時の電気料金が上昇することで需要家の経済的な負担が増え、不満が生じる可能性がある点です。また、電力需要の抑制は需要家側の行動や意識に左右されるため、効果が十分に得られない場合もあります。
インセンティブ型デマンドレスポンス
インセンティブ型デマンドレスポンスとは、電力会社との事前契約に基づいて、需要家が電力会社の呼びかけに応じて節電すると対価を受け取れる仕組みです。
インセンティブ型デマンドレスポンスの利点は、事前契約による確実な効果が期待できることです。また、節電量に応じて受け取るインセンティブにより、需要家の満足度が高まる点もメリットと言えます。
一方で、契約を結ぶ手続きの際やインセンティブを設定する際には労力が必要な場合があることが課題点として挙げられます。一般家庭や企業に適用するためには、キャンペーンやポイント制度などのインセンティブの仕組みの整備が必要です。
デマンドレスポンスのメリット・デメリット
電力の需給バランスの調整に需要家が協力する仕組みであるデマンドレスポンスには、メリットとデメリットがあります。デマンドレスポンスの主なメリット・デメリットをそれぞれ紹介します。
デマンドレスポンスのメリット
デマンドレスポンスには電気料金の節約をはじめとしたさまざまなメリットがあります。
(1)電気料金を節約できる
デマンドレスポンスへの参加により、需要家は電力使用量を減らし、電気料金を節約することが可能です。さらに、節電目標を達成すると電力会社から割引やポイントなどのインセンティブを受け取ることができる場合があります。
(2)環境問題に貢献できる
デマンドレスポンスによって電力使用量を削減することで、CO2排出量などの環境負荷を低減できます。このような取り組みは地球温暖化対策への貢献につながり、企業は社会的責任を果たしていることをアピールできるでしょう。
(3)ESG評価を高められる
近年、企業はESG(環境・社会・企業統治)経営への取り組みが重要視されています。デマンドレスポンスは環境問題への貢献により、ESG評価を高める有効な手段の1つとなります。
デマンドレスポンスのデメリット
デマンドレスポンスには、思っていたよりも効果が少ないこともあるなどのデメリットも存在します。
(1)想定よりも効果が得られない場合がある
節電や使用時間の調整にもかかわらず、想定したほどの節約効果や報酬が得られないこともあります。事前にシミュレーションを行い、効果的な節電方法を把握することが重要です。また、電力会社によっては、日別や時間帯別の電力使用量を確認できる場合もあります。自社の電力使用の状況を把握し、計画的に取り組みましょう。
(2)参加に際して時間や手間を要する取り組みもある
デマンドレスポンスには定期的な募集や年1回の入札など、さまざまな参加方法があります。参加までの時間や手間は、選択する取り組みや電力需要の抑制方法によって異なります。そのため、デマンドレスポンスの参加を検討する際には、早めに電力会社やアグリゲーターに相談することが大切です。
まとめ
デマンドレスポンスは電力の需要と供給のバランスを安定的に保つために欠かせない制度です。電力の使用量が供給量を大きく上回ってしまうと、正常な電力供給が行えなくなり、大規模停電が発生してしまう可能性があります。そのため、デマンドレスポンスによる電力消費の制御が、日本の電力供給の安定化に欠かせません。
デマンドレスポンスには、実施する企業にとってはメリット・デメリットの両方があります。自社でデマンドレスポンスを実施するかどうかを検討する場合は、メリット・デメリットを比較して、慎重に判断しましょう。
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