火力発電のメリット・デメリット|日本での現状・今後も紹介
日本国内における発電電力量のうち、約7〜8割は火力発電が占めています。火力発電は、発電の仕組みが非常にシンプルであり利便性も高いことから、エネルギー自給率の低い日本では数十年前から火力発電に大きく依存してきました。
火力発電は日本で広く採用されているだけあり、多くのメリットが存在します。しかし、近年では地球温暖化対策をはじめとした環境問題によって、火力発電のデメリットが大きく懸念されていることも実情です。
そこで今回は、火力発電の概要と3つのメリット・3つのデメリット、さらに日本における火力発電の現状・今後について徹底解説します。
カーボンニュートラルへ向けた、
企業が取るべき具体的アクションとは?
火力発電とは?特徴を詳しく解説
火力発電とは、名前の通り「火」の力を利用して発電する方法です。具体的には、燃料を燃やして得られた火力(熱エネルギー)を利用して発電します。
【火力発電の仕組み】 (1)化石燃料を燃やして水を沸騰させ、蒸気を発生させる (2)蒸気のエネルギーを利用し、タービンという機械を回す (3)タービンとつながった発電機が動き、電気がつくられる |
火力発電は、原子力発電や水力発電と比べて発電所・発電設備の建設コストが安く、比較的短期間で建設できる点が特徴です。また、発電量が調節しやすくほかの電力とのバランスもとりやすいことから、日本では古くから火力発電に依存しています。
また、火力発電とひとくちに言っても、燃料を燃やすことによって得られる、どのエネルギーを利用するかによって細かに種類分けされます。日本国内の火力発電としては、ボイラーで発生した蒸気によって蒸気タービンを回す「汽力発電」が主力です。
火力発電で使われる燃料
火力発電で使用される主な燃料には、石油・石炭・液化天然ガス(LNG)の3つが挙げられます。そして、これらは一般的に「化石燃料」と総称されます。それぞれの特徴は、下記の通りです。
●石油 石油は、炭化水素を主成分とする液状の化石燃料です。海や湖に生息していた太古の生物の死骸が地中深くに堆積し、数百万~数千万年の期間を経て変化したものと言われています。液体であることから貯蔵や運搬が容易で、日本で使用される石油の多くは中東諸国から輸入されていることも特徴です。 |
●石炭 石炭は、数千万~数億年前の植物が起源とされる化石エネルギー資源です。大昔の植物が堆積して地中深くに埋没し、長期間にわたる地熱や地圧の影響を受けたことによって、炭素分の豊富な可燃性の岩石状物質に変化したと言われています。日本では使用する石炭のほとんどを輸入に頼っており、半分以上がオーストラリアからの輸入です。 |
●液化天然ガス(LNG) 液化天然ガス(LNG)とは、メタンを主成分とした天然ガスを-162℃まで冷却し、液化させたものを指します。液体の形に冷却するのは、体積を大幅に減少させて大量貯蔵と輸送を安全かつ容易にするためです。石油・石炭と同様、日本では液化天然ガスのほとんどを輸入に頼っています。 |
火力発電のメリット3つ
1887年に日本で初めて火力発電所が誕生してから火力発電は徐々に普及し、現在では電力供給のほとんどを火力発電に頼るようになりました。火力発電が主流の発電方法として大いに活躍できたのは、火力発電特有のメリットが複数あったためです。ここからは、火力発電の代表的なメリットを3つ、それぞれ詳しく説明します。
安定的な発電が可能である
水力発電は、降水量によって発電量が変動します。また、太陽光発電は天候に、風力発電は風量によっても電力の供給量が大きく左右される点が弱点です。
火力発電は発電所内で化石燃料を燃やし、発生したエネルギーを利用して発電する仕組みであるため、燃料さえあれば安定的に電力を供給できます。こうした点は、火力発電の最大の魅力であり、火力発電ならではの強みとも言えるでしょう。
また、電力供給の安定性という点では原子力発電も引けを取りません。しかし、2011年に発生した東日本大震災以降、原子力発電所の稼働は縮小傾向にあります。必要な電気量を十分に供給するためにも、火力発電は欠かせない存在と言っても過言ではありません。
エネルギーの変換効率が高い
エネルギーの変換効率とは、発生させたエネルギーを電気に変換できる割合を指します。エネルギーの変換効率と発電効率は比例しており、変換効率が高いほど無駄なく多くの電気をつくりだせることになります。
下記は、エネルギー変換効率の目安を発電方法ごとにまとめた表です。
水力発電 | 80% |
液化天然ガス(LNG)発電 | 55% |
火力蒸気タービン発電 | 43% |
ガスタービン発電 | 35% |
原子力発電 | 33% |
数ある発電方法の中でも、エネルギーの変換効率が最も高いのは水力発電で、次いで液化天然ガス(LNG)を用いた火力発電が高くなっています。
水力発電のエネルギー変換効率は80%と、液化天然ガス(LNG)を用いた火力発電よりも25ポイントも高いものの、水力発電は前述の通り安定的な電力供給が困難です。実用性を含めると、火力発電が最も優れていると言っても過言ではありません。
出力調整を柔軟に行える
火力発電は、電気の出力を柔軟にコントロールできるというメリットもあります。
日本では夏季や冬季に空調設備の需要が高まることから、季節による電気使用量の差が顕著です。出力調整を柔軟に行える火力発電なら、気温変化による急激なエアコン需要で一時的に電気使用量が増加しても、電力不足を起こさず即座に対応できます。
太陽光発電や水力発電などの自然エネルギー源に頼った発電方法でも、多少の出力調整は可能です。しかし、前述の通り気候によって発電量が大きく左右されるため、急激な電力消費に対応できない可能性もあります。
近年では、一般家庭におけるIoT機器の導入も増加しています。電力消費量の増加に比例して、火力発電の需要の高まりも容易に予測できるでしょう。
火力発電のデメリット3つ
火力発電には実用性の高さを示す多くのメリットがある一方で、人々の安心・安全な暮らしを維持する上では無視できないデメリットも複数存在することに注意が必要です。そこで次に、火力発電の代表的なデメリット3つを、それぞれ詳しく説明します。
温室効果ガスを排出する
火力発電の最大のデメリットは、温室効果ガスを排出するという点です。温室効果ガスとは、温室効果をもたらす二酸化炭素やメタン、フロンガスといった気体のことで、地表の熱を吸収する性質をもっています。
大気中に温室効果ガスが大量に放出されると地球全体の平均気温が上昇し、結果として地球温暖化を招いてしまいます。
環境省が公表しているデータによると、2020年度における日本の温室効果ガス排出量のうち、エネルギー起源CO2は「84.1%(9億6,700万トン)」を占めていることが分かります。エネルギー起源CO2とは、火力発電などによって生み出される二酸化炭素のことです。
出典:環境省「2020年度(令和2年度)温室効果ガス排出量(確報値)について」(PDF)
火力発電は地球温暖化の大きな要因である一方、電力の安定供給には欠かせません。カーボンニュートラルの実現に向けて温室効果ガスの排出量を削減しつつ、いかに安定的に電力を供給するかといった点は、世界的な課題にもなっています。
燃料の自給が困難である
経済産業省が公表したデータによると、2021年度における日本のエネルギー自給率は、「約13%」でした。このことから、日本で使用する化石燃料の多くは海外からの輸入に大きく依存していることが分かります。
出典:経済産業省「エネルギー白書2023について (令和4年度エネルギーに関する年次報告)」(PDF)
化石燃料を海外輸入に頼ることの懸念点としては、「国際情勢の変化による価格の高騰リスク」が挙げられます。実際に、2022年2月24日に発生したロシアとウクライナの戦争によって、日本でも電気代やガソリン価格の高騰といった影響が見られました。
こうした地政学的リスクによる燃料価格の高騰は、日本国内で調整できないほか、いつどこで何が起こるかを確実に予測できず対策という対策もとれません。今後も何らかの問題が生じ燃料の輸入が困難となった場合、大規模な電力不足に陥るおそれがあることに注意が必要です。
有限な資源で枯渇の恐れがある
火力発電の原料となる化石燃料は、地球が数百万年以上かけて一つひとつつくりあげてきた限りある資源であり、無限に湧いてくるわけではありません。一方で、太陽光発電や風力発電といった発電方法は持続可能な自然エネルギーを利用するため、枯渇の心配はゼロと言えるでしょう。
さらなる資源を採掘できる技術が開発されないまま火力発電に化石燃料を使い続けると、いずれ必ず枯渇し、結果として世界的な電力不足に陥るおそれがあります。
日本における火力発電の現状・今後
環境問題にあらゆる影響を及ぼす火力発電は、依然として日本における主流の発電方法となっています。
しかし、2020年10月には当時総理大臣だった菅義偉氏が国会で「2050年までにカーボンニュートラルを実現する」と表明しました。カーボンニュートラル宣言がきっかけとなり、現在では火力発電への強い依存から脱却し、自然エネルギー発電を推進する動きが見られています。
翌年の10月には経済産業省が策定した「第6次エネルギー基本計画」にて、2030年度までの短期~中期的な見通しとして下記が示されました。
● 液化天然ガス(LNG):20% ● 石炭:19% ● 石油等:2% |
出典:経済産業省「エネルギー基本計画の概要」(PDF)
カーボンニュートラルの実現は、政府による取り組みだけでなく、企業や一般市民による協力も欠かせません。どのような形で取り組めばよいのか分からない場合は、再生可能エネルギー関連サービスの提供企業が実施するイベントなどへの参加もおすすめです。
まとめ
火力発電とは、石油や石炭などの化石燃料を燃やして得られた火力を利用して発電機を動かし、電気をつくるという発電方式です。
火力発電にはさまざまなメリットがある一方で、地球環境に大きく影響するデメリットもいくつか存在します。カーボンニュートラルの実現のためには、化石燃料の使用割合を減らして、太陽光や風力などの自然エネルギーの使用割合を増やしていくことが大切です。
個人や企業でも、電力消費について再生可能エネルギーへの転換は可能です。カーボンニュートラル達成に向けて、再生可能エネルギーの導入などを検討してみてはいかがでしょうか。
弊社ホールエナジーでは、再エネ導入のお手伝いをさせていただいております。非化石証書購入代行とコーポレートPPA導入のご支援も行っておりますので、カーボンニュートラルに向けてお困りの方や、情報を求めている方はお気軽にお問い合わせください。
無料の資料ダウンロードはこちら→https://www.whole-energy.co.jp/download/
カーボンニュートラルへ向けた、
企業が取るべき具体的アクションとは?