再エネ発電賦課金とは?特徴・仕組み・計算方法を解説
脱炭素社会の実現に向け、太陽光や風力など自然由来の力を活用する、再生可能エネルギー(以下、再エネ)の普及が進んでいます。
しかしながら、再エネには研究開発や設備投資に費用がかかること、天候不順による発電量不足など課題も多く存在します。
その課題を解決するため、「電気を使う全ての人が協力して再エネ普及を支える制度=再エネ賦課金(ふかきん)」が導入されました。
今回は、再エネ賦課金について分かりやすく解説します。
カーボンニュートラルへ向けた、
企業が取るべき具体的アクションとは?
再エネ発電賦課金とは?
正式名称を「再生可能エネルギー発電促進賦課金」といい、再エネの買い取りに必要な費用をまかなうための負担金です。
今はまだコストの高い再エネ発電由来の電力を、電力会社が一定期間・一定価格で買い取る「固定価格買取制度(以下、FIT制度)」を運用するため導入されました。
2012年に開始された再エネ賦課金は、短く見積もっても2043年までは続く見通しです。
これは、FIT制度の調達期間が最長20年であるためです。
再エネ発電賦課金の特徴
再エネ賦課金は、再エネ普及のため広くお金を集めFIT制度を運用するためのもので、最終的には再エネ発電者に恩恵が届くよう設計されています。
また、以下のような特徴があります。
- 電気を使う人全員が負担する
- 全国一律価格
- 電気料金の一部として徴収する
- 負担額は電気使用量に比例する
- 太陽光発電など自前の再エネ利用分には再エネ賦課金をかけない
- 再エネ賦課金の単価は経済産業大臣が毎年決定する
再エネ賦課金の単価は変動型で、買取価格や再エネ導入の進捗状況を推測し、毎年経済産業大臣が決定しています。
推測値と実績値に差があった場合は、翌々年度の再エネ賦課金単価で調整します。
FIT制度の対象となる再エネは、太陽光・風力・水力・地熱・バイオマスの5種類です。
国が定める要件を満たす事業計画に基づき新たに発電を始めた場合、その電力は買取対象になります。家庭用など10kW未満、またはビルや工場などで設置する10〜50kWの太陽光は、自分で消費した後の余剰分が買取対象となります。
地下資源の乏しい日本にとって、再エネ普及はエネルギー自給率を向上させる有効な手段です。
化石燃料の輸入依存から脱却すれば、燃料価格の高騰に伴う電気料金の変動を抑えることができるからです。
再エネ発電賦課金・固定価格買取制度の仕組み
FIT制度の仕組み(電気とお金の流れ)を見ていきましょう。
発電事業者(企業や一般家庭も含む)が再エネで発電した電力の内、自家消費されなかった余剰分を、電線を通じて電力会社に送ります。
電力会社はその電力を法令で定められた価格で買い取ります。
この買い取りに使われるのが「再エネ賦課金」です。
買い取った電力は一般送電網を介して企業や家庭に供給されます。 電気利用者は、使用量に応じて再エネ賦課金を含んだ金額を電力会社へ支払います(毎月の電気代支払い)。
徴収した再エネ賦課金は、電力会社がまとめて国へ納付します。
国は電力会社へ交付金(再エネ買取に要した費用)を支給する流れです。
このように、再エネ発電量に比例して再エネ賦課金も増える仕組みなのです。
再エネ発電賦課金の計算方法
再エネ賦課金の単価は毎年、電力会社へ国が支払う交付金の見込額と、電力会社の想定供給電力量をもとに国が算定します。
直近5年間の単価は以下の通りです。
年度 | 2019年 | 2020年 | 2021年 | 2022年 | 2023年 |
単価(kWhあたり) | 2.95円 | 2.98円 | 3.36円 | 3.45円 | 1.40円 |
具体的な利用者負担額について、4人家族のケースで計算してみましょう。
再エネ賦課金は、【1ヶ月の使用電力量×再エネ賦課金単価】で求められます。総務省の調査に基づく一般的な世帯(4人家族)での1ヶ月の平均使用電力量は400kWhとされているので、直近5年間で支払った再エネ賦課金は以下のように計算できます。
2019年:400kWh×2.95円/kWh=1,180円/月
2020年:400kWh×2.98円/kWh=1,192円/月
2021年:400kWh×3.36円/kWh=1,344円/月
2022年:400kWh×3.45円/kWh=1,380円/月
2023年:400kWh×1.40円/kWh=560円/月
2023年度の賦課金単価
再エネ賦課金の単価は、導入されてから年々上昇していましたが、2023年度は制度開始以降、初めて下がりました。
その原因は、2022年に起こったウクライナ危機による化石燃料の価格高騰です。
これにより再エネ電力の需要が増え、販売収入(回避可能費用)が大幅に増加した結果、2023年度の単価が下がったのです。
2023年度の単価は、2023年5月〜2024年4月まで適用されるため、電気利用者にとっては嬉しい事柄です。
これにより2023年度の一般的な世帯の負担額は、月額560円で前年比−820円、年額6,720円で前年比−9,840円となります。
生活インフラである電力がここまで値下がりすると、かなりインパクトがあります。
再エネ発電賦課金を払いたくない場合は?
再エネ賦課金の請求額は年々増えているため、負担に感じている方も多いと思います。
再エネ賦課金は電気を使う人全員が負担する仕組みであるため、支払いを避けることはできませんが、負担額を減らすことはできます。
ここでは、再エネ賦課金の負担額を減らすための工夫を3つご紹介します。
節電に取り組む
再エネ賦課金は使用電気量に比例するため、節電することで負担額を減らせます。
具体的な行動としては、照明や空調をこまめに消す、または使用時間の短縮や設定を見直す、照明をLED化する、省エネ型の家電に切り替えるなどが挙げられます。
また、待機電力を抑えることも有効です。待機電力とはコンセントに繋がっていることで発生する微小な電力です。
資源エネルギー庁の調査では、一般的な世帯における年間の待機電力は、数千円になるそうです。長期休暇の際は設備や家電のコンセントを抜くことをおすすめします。
減免制度を利用する
電気使用量が特に多い事業者に対しては、再エネ賦課金の減免制度があります。
具体的には、年間の電気使用量が100万kWhを超えており、電気使用量が平均の8倍を超える製造業、もしくは平均の14倍を超える非製造業であれば、申請条件を満たせる可能性があります。
また、一次産業の農業・林業、漁業なども、平均より多く電気を使う事業者は申請対象になる場合があります。
この減免制度は、国際競争力の維持・強化の観点から導入されたものであり、現状では主に大企業を対象にしています。そのため、中小企業が申請するのは難しい場合が多いです。
太陽光発電を利用する
再エネ賦課金の負担額を減らすのに最適な方法は、太陽光発電を導入し自家発電した電力を使うことです。再エネ賦課金の特徴で挙げたように、自家発電した再エネ利用分には再エネ賦課金がかかりません。
また、自家発電した電気を蓄電池(バッテリー)に溜めて、必要な時に使うことで効率的に電力を消費できます。
太陽光発電の設備は技術革新により性能が向上しており、手頃な価格で購入できるものも増えました。電気を使う側だけでなく、作る側になることで電力会社から購入する電気を減らすことができます。
まとめ
再エネ普及を支える再エネ賦課金は、電気使用量に比例して負担額が増えます。
賦課金単価は年々上昇傾向にあり、今後も事業者にとってコストをなるでしょう。しかしながら、太陽光発電などで自家発電する電気量が増えることで、賦課金の負担額を減らすことができます。
ホールエナジーでは、電力と再エネに特化したコンサルティング会社として、再エネの導入やカーボンニュートラル実現のサポートを得意としています。
電力の再エネ化をはじめ、非化石証書購入代行やコーポレートPPAのアレンジなど、お客様のご状況に応じて対応させていただきます。
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参考資料
TEPCO 電気料金制度|再生可能エネルギー発電促進賦課金単価
経済産業省 再生可能エネルギーのFIT制度・FIP制度における2023年度以降の買取価格等と2023年度の賦課金単価を設定します