TCFDの開示項目とは?基礎知識や背景、項目の内容を解説
昨今ビジネスシーンにおいて「TCFD提言」という言葉を耳にしたことはあっても、詳しく内容について知らない方も多いのではないでしょうか。
そこで、この記事ではTCFDの基礎知識から開示項目、開示するメリットなどについて解説していきます。
自社でTCFDの支持を検討している方は参考にしてみてください。
カーボンニュートラルへ向けた、
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TCFDの基礎知識
まずは、TCFDに関する基本的な内容を抑えていきましょう。
そもそもTCFDとは?
TCFDは「Task Force on Climate-related Financial Disclosures」の略で、日本語では「気候関連財務情報開示タスクフォース」と翻されます。
2015年、G20からの要請をきっかけに、金融安定理事会(FSB)を中心に設置されました。
気候変動の現状を改善するべく、企業や投資家に向けて、気候変動への取り組みを促すことを目的としています。
TCFD提言とは?
2017年6月に、TCFDがまとめ、公表した最終報告書がTCFD提言です。
2018年から毎年、この提言をもとに実際の開示状況をまとめたステータスレポートが公表されています。
TCFD提言の目的は?
TCFD提言の目的は、気候変動に関する情報やリスクを加味した、財務情報を企業が開示するよう促進することです。
また、投資家が気候変動という問題に対して、理解、意識して投資を判断するよう促すことも狙いの1つとなっています。
企業も投資家から信頼を獲得しやすくなりますし、投資家もより将来性のある企業へ投資できることがメリットです。
TCFD開示義務化の背景
TCFD開示が義務化された背景には、いくつかの要因があります。
気候変動の影響が増大している
世界的に気候変動による影響が増大しており、地球温暖化による異常気象や自然災害の激甚化が深刻化しています。
個々の頑張りももちろん必要ではありますが、世界中の企業がどのような取り組みを行うかが非常に重要です。 気候変動リスクに対して、各企業が共通の方針をもとに、事業方針を策定しなければなりません。
企業を評価する基準が変化している
環境問題に対して、積極的な取り組みを行う企業が増えてきました。
理由としては、物理的リスクと賠償責任リスク、移行リスクといった3つのリスクがあるためです。
上記のような企業の財務状況以外の要素を重要視するEGS投資も増えており、従来企業が公表してきた内容ではわからない情報を、TCFD提言により開示する必要が出てきています。
企業の評価基準が変化しており、TCFD開示は企業にとっても自社の取り組みのアピールになるでしょう。
4つのTCFD開示項目
TCFDには、「ガバナンス」、「戦略」、「リスク管理」、「指標と目標」と、4つの開示基礎項目があります。
項目には優先度が定められており、ガバナンスが最上位、戦略、リスク管理、指標と目標と続きます。
ここからは、それぞれの具体的な内容について解説していきます。
ガバナンス
気候関連のリスクと、機会に関するガバナンスについての項目です。
具体的な内容としては、気候変動のリスクや機会を踏まえ、社内に委員会の設置、役員を配置していることや、シナリオ分析の結果を経営陣や取締役会にて共有されていることが求められます。
【推奨される開示内容】
- 気候変動のリスクと機会についての情報
- 取締役会による監視及び管理体制についての情報開示
- 気候関連のリスクと機会を評価・管理するうえでの経営の役割の説明
戦略
気候関連のリスクと機会がもたらす組織の事業・戦略・財務計画への影響についての項目です。
【推奨される開示内容】
- 組織が識別した短期・中期・長期で気候変動のリスクと機会、その特定方法と対処法の説明
- 気候関連のリスクと機会が組織のビジネス、戦略及び財務計画に及ぼす影響の説明
- 2℃或いはそれを下回る将来の異なる気候シナリオを考慮し、当該組織の戦略のレジリエンスを説明する。
3項目には、TCFDのメイントピックと言えるシナリオ分析も含まれます。
気候変動のリスクやそれに伴う経営状況の変化に対して、様々なパターンのシナリオを想定して、対処法を考えることです。
具体的な対策を想定し、開示することで、投資家や消費者からの信頼に繋がると言えるでしょう。
リスク管理
気候関連リスクを組織がどのように識別・評価・管理しているかについての項目です。
【推奨される開示内容】
- 気候変動のリスクと機会について識別・評価・管理するプロセスの説明
- 上記のプロセスが組織全体のリスク管理にどのように統合について説明
指標と目標
気候関連のリスクと機会を評価・管理する場合に用いる、指標と目標についての項目です。
【推奨される開示内容】
- 組織が戦略とリスク管理のプロセスにおいて、気候変動のリスクと機会を評価・管理するために用いる指標と目標
- 温室効果ガス排出量(スコープ1、2、3)
- リスクと機会の管理上の目標と実績
GHG(温室効果ガス)排出量の場合、削減するためにこれまで行ってきた取り組みや、今後の削減目標や基準などについての提示が求められます。
特定セクター向けの補助ガイダンス
開示項目は、気候変動の潜在的な影響が大きなセクターについて、金融セクター向けと非金融セクター向けの2つの補助ガイダンスが作成されています。
それぞれの内容について、詳しく見ていきましょう。
金融セクター
金融セクター向けに4つの補助ガイダンスが策定されており、追加提言の内容が定められています。
- 銀行
炭素関連資産に対する信用リスクの影響、 貸出での気候関連リスクの影響など
- 保険
新規保険商品、競争力、保険ポートフォリオにおける気候関連リスクの評価や評価モデルなど
- アセットオーナー
投資戦略、シナリオ分析、リスクと機会の評価手法、 低炭素エネルギーへの移行におけるポートフォリオのポジショニングなど
- アセットマネージャー
追加提言の内容は、低炭素エネルギーへの移行におけるポートフォリオのポジショニング以外、アセットオーナーと同様
非金融セクター
非金融セクター向けにも、4つの補助ガイダンスが策定されており、それぞれの内容に対する評価と潜在的影響についての開示が求められています。
- エネルギー
<対象>石油・ガス、石炭、電力
法令遵守、営業費用やリスクと機会の変化、投資戦略の変化など
- 運輸
<対象>空運・海運、陸運(鉄道、トラック)、自動車
法規制強化、新技術による現行の工場・機材への財務リスクなど
- 素材・建築物
<対象>金属・鉱業、化学、建設資材・資本財、不動産管理、開発
GHG排出・炭素価格等に対する規制強化など
- 農業・食糧・林業製品
<対象>飲料・食品、農業、製紙、林業
GHG排出削減、リサイクル活用・廃棄物管理など
開示するメリット
TCFDを開示することで、企業はどのようなメリットがあるのでしょうか。
リスク管理を強化できる
TCFDに対応する中で、気候変動におけるリスクが経営へ与える影響やその対策、分析などが求められます。
リスクマネジメントを強化する機会にもなるでしょう。
また、SDGsやESGなどの観点からは考慮できない点も想定できるため、TCFDならではのメリットと言えます。
新規事業創出のきっかけになる
気候変動における変化は、リスクでもありますが新たなビジネスチャンスに繋がる可能性もあります。新規事業の創出にしたいと考える企業も多いです。
また、TCFDを開示することでの信頼性やイメージアップにもなりますし、近年は脱炭素経営を行っているかどうかを重要視する投資家も増えているため、重要と言えるでしょう。
TCFDの日本の状況
日本は2018年にTCFDに賛同し、数社のみだったところから、メガバンクやメガ損保も賛同するような規模まで拡大しました。
さらなる拡大を目指し、金融庁、環境省、経済産業省など、国としても前向きな発信を行うなどしています。
2023年4月時点での日本の賛同企業、機関数は1,304と世界最多となっており、非金融セクターの支持が多いことも特徴としてあげられます。
まとめ
TCFDの開示項目に関する内容について解説していきました。
TCFD開示は、企業にとっても多くのメリットがあり、環境問題の観点だけでなく、企業価値を高めるためにも重要な事項と言えるでしょう。
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参考記事
環境省 気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)の概要資料
JPX TCFD提言に沿った情報開示