電気料金値上げの現状は?原因と企業にできる対策、電気料金の内訳について解説

2023.08.11
コスト削減電力卸売市場

「電気の使用量はさほど変わっていないのに請求される電気料金が上がっていた」という経験をされている企業は少なくありません。その原因は、電力会社による電気料金の値上げです。

本記事では、電気料金値上げの現状や原因と企業にできる対策を解説します。自社の電気料金を少しでも下げたいと考えている方はぜひ参考にしてください。

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電気料金値上げの現状

大手電力会社7社(北海道・東北・東京・北陸・中国・四国・沖縄)が経済産業省に提出した電気料金値上げの認可申請が、2023年5月16日の関係閣僚会議にて了承され、一部補正したのち5月19日に認可されました。
これにより2023年6月の使用分から、大手電力7社の電気料金が値上げされます。
値上げ幅は各社平均15~39%程度となります。一方で関西・中部・九州電力は値上げに関する申請書を提出していません。

電気料金値上げの原因

大手電力会社7社は2022年11月〜2023年1月にかけて値上げ認可申請を提出しています。それは何故なのでしょうか。

燃料費調整額の高騰

燃料費調整額とは、原油や液化天然ガス(LNG)の価格変動を電気料金に反映させる項目です。特に高騰しているのが液化天然ガスで、2021年4月から1年半で価格が約3倍になりました。背景には新型コロナウイルスによる経済活動の停滞と回復、ロシア産エネルギーの輸入制限、脱炭素社会の実現に向けた需要の増加、円高が進んだことが挙げられます。

石炭も2021年末から値上がりし、2022年後半にはある程度落ち着いたものの以前より価格が高くなっています。背景にはアジア新興国や欧州での需要増加があります。現在の日本は電力の約7割を液化天然ガスと石炭による火力発電に頼っているため、燃料調整額の影響を大きく受けてしまうのです。

日本国内の電力供給不足

国内の電力供給不足も電気料金値上げの原因となっています。2020年の発電供給量は、2010年に比べて12.9%減少しています。その理由は、原子力発電所と火力発電所の稼働減少です。

原子力発電所は、2011年の東日本大震災後ほとんどが稼働を停止しており、2020年の発電量は2010年に比べ86.5%減少しています。火力発電所は、2016年の電力自由化によって電気料金の競争が激化し、採算性の悪い老朽化した発電所の休廃止が進んだことに加え、脱炭素社会に向けCO2排出量が多い火力発電は縮小傾向にあります。

参考:集計結果又は推計結果(総合エネルギー統計)|資源エネルギー庁

新電力各社の値上げ

2016年の電力自由化により市場に参入した新電力各社は、輸入する燃料価格の影響を受けやすく経営状況が厳しいため、従量料金の値上げや燃料費調整額の上限撤廃、独自の調整額追加などを実施しています。

自社で発電設備を持たない新電力会社の多くは、日本卸電力取引所(JEPX)から電力を仕入れて消費者に提供していますが、市場価格に連動して電気料金が上昇するため注意が必要です。

再エネ賦課金の価格変動

再エネ賦課(ふか)金とは、太陽光・水力などの再生可能エネルギー(以下、再エネ)を普及させるための制度で、経済産業省が毎年単価を決めています。
再エネで発電した電気を電力会社が一定価格で買い取る際、その費用の一部を電気料金に上乗せし消費者から徴収する仕組みで、2012年から始まりました。

再エネ賦課金の導入後、産業用の太陽光発電所が急増し、年平均26%の伸び率で再エネ発電量が増え賦課金も上昇傾向です。国内外さまざまな状況下でエネルギー価格が高騰することを受け、2023年度の再エネ賦課金単価は2022年度の3.45円(kWh)から1.40円(kWh)に引き下げられました。

託送料金の値上げ

託送(たくそう)料金とは、発電所で作られた電気を消費地まで運ぶため、小売電気事業者が一般送配電事業者に支払う「送配電網の利用料」のことで、既存の大手電力会社の小売部門、新電力各社ともに販売した電気量に応じて支払います。

2023年4月から送配電会社10社が託送料金の値上げを行います。
送電網の増強やデジタル化の投資に充てるとのことで、1キロワットあたり4.4〜16%の値上げとなり、電気料金の値上げにも繋がります。

企業の電気料金値上げへの対策

国内外の要因により電気料金は値上げしています。電気料金を抑える有効な方法を解説します。

電力会社やプランを見直す

携帯電話のキャリアを変える様に、電力会社も自由に乗り換えできる時代になりました。
自社の電力消費量や電気をよく使う時間帯を確認し、各社の料金プランを比較検討してみましょう。
ガス会社や通信事業者も電気事業に参入しており、セット割プランなどもあります。

ただし、料金表の比較のみで電気料金が下がるかどうかを見極めるのはやや難しいです。

節電に取り組む

コストをかけずに取り組める対策は節電です。
エアコンの設定温度を調整したり、フィルターを清掃したり、照明の点灯時間を短くしたり、OA機器の電源を切らずにスリープモードにすることは手軽にできる方法です。

再生可能エネルギーを導入する

電力を自社で生み出すことで、電力会社から電気を買わないようにする方法もあります。
代表的な手法は「自家消費型太陽光発電」です。
オフィスや工場の屋根に太陽光パネルを設置し、発電した電力を自社内で使用します。
自家消費型太陽光発電は補助金や税制優遇もあるので、導入時の初期費用を抑えられます。
また、自家発電で余った電力は電気会社に売ることもできます。
ただし、補助金を活用したとしても設備投資がかかるため、どれほどの効果があるかシミュレーションしてから導入しましょう。

省エネに有効な設備を導入する

電力消費量が多い設備として、エアコンなどの空調設備が挙げられます。技術革新により新しい空調設備ほど省エネ性が高いため、10年をめどに最新機種に変更する方法も対策のひとつです。
コストを抑えた空調の節電方法としては、建物に断熱塗装を施す、空調を届ける範囲を仕切る、エネルギーマネジメントシステムを導入して電力消費を効率的にするなどがあります。

電気料金の内訳

毎月の電気料金は「基本料金」・「電気量料金(燃料費調整額を含む)」・「再生可能エネルギー発電促進賦課金」の3つを合計した金額です。それぞれの内訳や算出方法を見ていきましょう。

基本料金

基本料金は、電力の消費量に関係なく契約したアンペア数に応じて毎月定額かかります。
契約アンペア数が大きくなると使用可能な電気量が多くなり基本料金も高くなります。
一般的な家庭でのアンペア数の目安は、1人・2人世帯で30A、3人世帯で40A、4人世帯で50Aとされています。

電気量料金

電気量料金は、1kWhあたりの単価が設定されており、使用した電気量に応じて毎月支払額が変化します。また、原油や石炭などの燃料価格の変動が反映される燃料費調整額も含まれます。

電力量料金=電気量料金単価(1kWhあたり)×1ヶ月の使用電力量+燃料調整単価×1ヶ月の使用電力量

 再生可能エネルギー発電促進賦課金

再エネ賦課金は、太陽光・水力などの再エネによる発電促進のために、電気使用者が一部を負担する仕組みです。
電力量料金と同様に、電気使用量に応じて毎月支払額が変化します。再エネ賦課金の単価は経済産業省が毎年決定していますが、これは地域による再エネ導入量のばらつきによって、国民負担に差が出ないようにするためです。

まとめ

電気料金の値上げは国内外の様々な要因で引き起こされています。しかしながら、電気料金は毎月の使用量を減らせば削減できますので、従来の使用方法を見直し対策を考えてみてはいかがでしょうか。

ホールエナジーは、エネルギーのコンサルティング会社として、電力コスト削減やカーボンニュートラル実現のサポートを得意としています。手数料無料で、電力会社の比較や電力契約の見直し・契約切り替えの手続きをサポートいたします。

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参考記事

経済産業省  https://www.meti.go.jp/press/2023/05/20230519002/20230519002.html

日本商工会議所 再エネ賦課金低下で一般家庭の電気料金は月820円減へ(経産省)

日本経済新聞社 電力10社、送電網利用料上げへ 23年度から最大16%

資源エネルギー庁 集計結果又は推計結果(総合エネルギー統計)