地球温暖化対策税の役割|仕組みや徴収方法、海外での取り組みについて解説
環境に関する税金に、「地球温暖化対策税」があります。
地球温暖化が深刻化する地球温暖化への対策を行うために、各国でも取り入れられている税金です。
本記事では、地球温暖化対策税の仕組みや役割、メリット・デメリットなどを解説していきます。
カーボンニュートラルへ向けた、
企業が取るべき具体的アクションとは?
地球温暖化対策税とはなにか
地球温暖化対策税とは、環境税として平成24年から導入されました。
石炭、石油、天然ガスなど、全ての化石燃料を使用した際に排出される二酸化炭素量に対して、課税される税金のことです。
平成9年に採択された京都議定書にて、温室効果ガスの削減を掲げたものの、増加している現状があったため導入されました。
この税制は、化石燃料による環境負荷に対して、広く公平な負担を求めるものとなっています。
地球温暖化対策税の仕組み
地球温暖化対策税は、国内で採取された全ての化石燃料に対して課税される「石油石炭税」を活用し、そこに上乗せする形で課税されるものです。
化石燃料ごとに二酸化炭素排出原単位が設定されており、それぞれの二酸化炭素排出量1トンあたりの税負担が等しく289円になるよう、税率が設定されています。
急激な税負担を避けるため、税率は3年半で3段階に分けて引き上げられました。
日本に地球温暖化対策税が導入された背景
地球温暖化対策税は環境負荷を抑制するためのもので、平成24年度の税制改正において、環境省により地球温暖化対策税が導入されました。
日本で排出される温室効果ガスの大半は、エネルギー利用により排出される二酸化炭素(エネルギー起源CO2)です。
そのため、中長期的にエネルギー起源CO2の排出量を抑制することが、温室効果ガスを削減する上で大きな課題となります。
具体策として、省エネルギーの推進や再生可能エネルギーの拡大などがあげられますが、これは原子力への依存度を下げる観点からも重要視されています。
地球温暖化対策税と炭素税の違いとは
炭素税は、地球温暖化対策税の一つです。
石油、石炭などの化石燃料を燃焼するによって排出された二酸化炭素に課税され、排出した人が排出量に応じた金額を税金として支払います。
地球温暖化の原因である化石燃料に依存しないようにすることが、炭素税の目的でもあります。
地球温暖化対策税は誰が負担するのか
地球温暖化対策税は、どのように納められているのでしょうか。
納税義務者、徴収方法について解説していきます。
地球温暖化対策税の納税義務者
化石燃料の採取者または保税地域からの引取者(輸入者)が、地球温暖化対策税の納税義務者となっています。
なお上乗せする税率に関して、販売先に転嫁するかどうかは事業者の判断で決めることができます。
地球温暖化対策税の徴収方法
地球温暖化対策税は、化石燃料を利用して二酸化炭素を排出した全ての人に対して課税されます。
金額については、二酸化炭素排出量に応じた税率を、炭素税に上乗せする形で徴収する仕組みです。
また、地方環境税として水源環境保全税や森林環境保全税、産業廃棄物税などを導入している地方自治体もあり、住民税に上乗せして徴収しているケースが多いです。
地球温暖化対策税の個人と企業の節税対策
地球温暖化対策税についても、節税対策が重要となります。
個人と企業、それぞれの立場における、具体的な対策についてご紹介していきます。
個人の節税対策
環境省の試算によると、3段階の税率が全て上がった状態で、平均的な世帯で月100円、年間1,200円程度、家計負担が発生します。
節税対策としては、省エネなど地球温暖化対策に取り組むことがあげられ、化石燃料に依存しないような取り組みを行うことが重要です。
ガソリン車、灯油、電気や都市ガスなどの利用を控え、二酸化炭素の排出を減らしながら経済的な負担も抑えましょう。
企業の節税対策
中小企業には、再生可能エネルギーの設備を積極的に普及させることが求められています。
しかし、導入する設備については安価でないため、企業にとっては大きな負担になることも事実です。
企業としては大きな費用負担が必要となりますが、国も企業を支援するためにさまざまな制度を設けています。
一定の条件を満たす事業者については、税制の優遇措置を受けることができるため、設備の導入を検討することをおすすめします。
現在導入されている制度として、「省エネ促進税制」と「連携省エネ税制」があります。
省エネ促進税制は中長期的な計画を立てて省エネ投資が行われた対象設備、
出典:資源エネルギー庁「事業者向け省エネ関連情報 各種支援制度」
連携省エネ税制は連携省エネルギー計画の認定制度において認められた工場等連携関連高度省エネルギー増進設備が対象で、どちらも取得価額の30%の特別償却等が税制優遇される制度となっています。
出典:資源エネルギー庁「事業者向け省エネ関連情報 改正省エネ法のポイント」
地球温暖化対策税を導入している海外の取り組み
世界各国でも、地球温暖化対策税が導入されています。
諸外国の取り組みについて、ご紹介していきます。
フィンランド
1990年、世界で初めて炭素税を導入した国がフィンランドです。
炭素税は、暖房用や輸送用の化石燃料に対して課税され、当初は排出される二酸化炭素1トン当たり1.12ユーロに税率は設定されていましたが、2018年時点では62ユーロまで引き上げられました。
産業用、家庭用どちらも課税対象で、徴収された税金は、所得税の減税や企業の社会保障費の一部補填などに充てられています。
スウェーデン
フィンランドに続き、1991年に炭素税を導入しました。
2021年時点で、世界で最も税率が高く、化石燃料の使用によって排出される二酸化炭素1トンあたり114ユーロ(約14,500円)となっています。
一方で、再生可能エネルギーなど環境負荷が少ないものを利用した場合には、減税などの措置も取られています。
徴収された税金は、法人税や所得税の減税などで活用されています。
ノルウェー
1991年に炭素税を導入し、2021年1月には政府によって気候変動行動計画が発表されました。
石油、天然ガスを生産する企業に対して、2030年までに炭素税を段階的に引き上げる方針を示しています。
集められた税金は一般会計に充てられますが、産業部門については免除、減免措置が取られています。
デンマーク
1992年の炭素税導入をはじめ、環境に対する税制に積極的に取り組んでいる国です。
エネルギー税、車体課税をはじめ、環境汚染物質への課税なども行なっています。 集めた税金は一般会計に入り、政府との協定によって税率が優遇する形で、産業部門へ配慮が行われています。
スイス
2008年に環境税が導入され、輸送用燃料を除いた部門に対して、二酸化炭素排出量1トンあたり12スイス・フラン(約1400円)が課されました。
その後、段階的な税率の引き上げが行われ、2017年には2008年の7倍の税率にまで引き上げられています。
徴収された税金は、国民や企業に還元するような使い方をしており、建築物改装、技術革新などのために一部は利用されています。
地球温暖化対策税のメリット
地球温暖化対策税を導入することでの、メリットについて見ていきましょう。
環境負担の削減
環境負担を削減できることが、最も大きなメリットだと言えます。
節税対策のため、課税により価格が上昇している化石燃料の使用を抑える企業を増やすことが狙いです。
また、電気自動車、太陽光発電設備など環境負荷が少ない設備は価格が高いケースが多いですが、税金を活用して補助金を出すことで導入が進むのではないかと期待されています。
国としては、地球温暖化対策税として導入することで、施策を行なっていること国民に発信できるというメリットもあります。
省エネ技術の発展と普及
税収を補助金として活用することで、省エネ製品を選ぶ人が増え、二酸化炭素排出量をより削減できるのではないかと期待されています。
また、省エネ製品の利用者が増えることで、省エネ技術の発展や普及にもつながります。 地球温暖化対策を進めるためには、個人の意識から変えていくことが重要だと言えるでしょう。
新たな温暖化対策に使える財源になる
地球温暖化対策税を徴収することで、財源が増えることはメリットと言えるでしょう。
税金は、地球温暖化対策や社会的、経済的な政策として使われていることも特徴です。
海外では社会問題を解決するために税金を有効的に活用している国もあり、さまざまな形で還元できることが期待されています。
地球温暖化対策税のデメリット
地球温暖化対策税にはデメリットもあります。
ネガティブな側面についても、理解しておきましょう。
企業や家庭への負担が大きくなる
税金が上がるため、企業や家計への負担は増えてしまいます。
地球温暖化対策税は、消費税のように全ての消費者に対して課される税金です。
そのため、生活必需品への支出の割合が多い家庭や、所得の低い家庭に対して、税負担が大きくなってしまいます。
また、税負担によって設備投資ができない、仕入れができない中小企業や工場は、事業を継続することが難しいケースもあるでしょう。
対策として、炭素税を再分配するなどの案が検討されています。
企業成長の妨げになる可能性がある
鉄鋼業界、化学業界など、二酸化炭素の排出量が多い産業にとっては企業成長を妨げる恐れがあります。
また、対策を行うために設備投資を行ったとしてもすぐに収益にはつながりにくく、中長期的な目線で考えなくてはいけません。
まとめ
地球温暖化が深刻化していることから、各国が対策を行うために地球温暖化対策税を導入しています。
個人、企業ともに課される税金であるため、仕組みやメリット、デメリットについて理解した上で、節税対策を行うことが重要と言えるでしょう。
企業においては、税制度をどこまで理解しているかが、利益に直結してきます。
環境問題の改善、そして企業の利益になる選択肢を見極めることが重要です。
弊社ホールエナジーでは、再生可能エネルギー導入などお手伝いをさせていただいております。非化石証書購入代行やコーポレートPPAのご支援も行っておりますので、お気軽にお問い合わせください。
≫無料で資料をダウンロード
カーボンニュートラルへ向けた、
企業が取るべき具体的アクションとは?
参考記事
環境省 地球温暖化対策のための税の導入