地球温暖化対策推進法の改正内容をわかりやすく解説|法改正の背景とポイント

2024.07.31
SDGsカーボンニュートラル脱炭素

地球温暖化対策の第一歩として1998年(平成10年)に成立した「地球温暖化対策推進法(通称:温対法)」は、京都議定書の内容に基づき、2022年までに8回の法改正を行なっています。

本記事では、地球温暖化対策推進法の概要から、法改正された背景や内容を解説します。
特に直近の2021年と2022年に行われた法改正について、ポイントを知りたい方はぜひ参考にしてください。

  カーボンニュートラルへ向けた、

企業が取るべき具体的アクションとは?

地球温暖化対策推進法とは

国・地方公共団体・事業者・国民が一体となって地球温暖化対策に取り組むための枠組みです。

法律の概要

京都で1997年に開催された「気候変動枠組条約第3回締結国会議(COP3)」において採択された国際条約の「京都議定書」を受け、1998年、国内での具体的な行動指針を定めるために作られました。
温対法とも呼ばれるこの法律で主軸に置かれているのは、気候変動に大きく関わっている温室効果ガスの排出量削減を推進することです。
年々、脱炭素社会に向けた取り組みが活発化し、これまで複数回の法改正を行なっています。

温室効果ガスの種類

地球温暖化対策推進法では、以下の6つを温室効果ガスと定めています。

  • 二酸化炭素
  • メタン
  • 一酸化二窒素
  • ハイドロフルオロカーボンのうち政令で定めるもの
  • パーフルオロカーボンのうち政令で定めるもの
  • フッ化硫黄

また、温室効果ガスは「エネルギー起源のCO2(燃料の燃焼で発生するもの)」と「エネルギー起源のCO2以外の温室効果ガス(工業プロセス・製造過程において発生するもの)」の2種類に分類しています。

地球温暖化対策推進法は改正し続けている

温室効果ガスの算定・報告・公表制度の創設や、排出量情報のデジタル化など、諸外国の動向や時代のニーズに合わせ、1998年から2022年までの24年間で8回の法改正を行なっています。
近年の改正内容について触れていきましょう。

2021年の法改正の内容とは

7回目の法改正では、2020年10月に菅総理(当時)が宣言した「2050年までのカーボンニュートラル実現」を基本理念として法に位置付けました。

法改正の背景

2021年の法改正は、以下の背景が関係しています。

  • カーボンニュートラルを目指す「ゼロカーボンシティ」を目指す自治体が増加した
  • ESG金融(環境、社会、ガバナンスを考慮した投融資)の進展に伴い「脱炭素経営」に取り組む企業が増加した
  • 脱炭素の取り組みがサプライチェーンを通じ、地域の企業に波及するようになった

脱炭素社会に向けた地方公共団体・事業者の動きを受けて、「地球温暖化対策の推進に関する制度検討会」で議論された内容を加味して、法改正を行いました。

2021年の法改正における3つのポイントとは

菅総理が宣言した内容を法律に明記し、脱炭素社会に向けた政策をスムーズに行えるようにした、2021年の法改正における3つのポイントを解説します。

  • 法律の基本理念に2050年カーボンニュートラル宣言を追加
  • 企業の排出量情報のオープンデータ化・デジタル化
  • 地域の脱炭素化につながる事業を推進するための認定制度・計画の新設

法律の基本理念に2050年カーボンニュートラル宣言を追加

2021年の法改正において最大のポイントは、「2050年までの脱炭素社会の実現(=カーボンニュートラル)」を明記し、法律上の確実性を担保したことです。
地球温暖化対策の長期的な方向性が記されているため、政権交代があった場合も政策の一貫性が保たれます。
また、地球温暖化対策を行う関係者に「国民」も盛り込まれました。
国や地方公共団体・事業者だけでなく、国民も取り組むべき課題であると示されています。

企業の排出量情報のオープンデータ化・デジタル化

事業者から報告された温室効果ガスの排出量情報は、国が取りまとめ公表するのですが、情報の報告を紙から電子システム(デジタル)に移行することが盛り込まれました。
これにより公表まで2年かかっていた集計作業が大幅に短縮すると期待されています。
また、この情報をオープンデータ(誰でも許可されたルールの範囲で複製や加工ができるデータ)化することで、国民や投資家が情報を閲覧し、公共性の高いデータとして二次利用できるようになります。

 地域の脱炭素化につながる事業を推進するための認定制度・計画の新設

 カーボンニュートラルの実現には、再生可能エネルギー(以下、再エネ)の普及が必要ですが、土地利用や景観などでトラブルが発生することもあります。
「地域の再エネ活用事業の計画・認定の制度」を創設することで、地域内での合意形成が図りやすく、再エネ事業に取り組みやすい基盤を整えました。
この認定を受け再エネ事業に取り組む場合、森林法や廃棄物処理法など様々な手続きをワンストップで受けられ、スムーズに計画を遂行できます。

2022年の法改正の内容とは

2021年に続き2022年も、脱炭素化に資する事業を推進するための法改正が行われました。
改正の背景やポイントを見ていきましょう。

法改正の背景

2021年6月に政府は「地域脱炭素ロードマップ」を取りまとめました。これにより脱炭素を巡る動きが加速しましたが、新たな課題も生まれました。

  • 資金調達が難しい脱炭素化に資する事業への投資を増やす必要
  • 地方公共団体による脱炭素の動きを、具体的なアクションにつなげてモデルとなる事例を創出する必要

投融資の判断が難しい、または認知度が低く関係者の理解が得られにくいという理由から、資金調達が難しい場合や、ゼロカーボンシティを実現するための具体的なアクションが分からない地方公共団体向けの新たな法改正が必要となったのです。

2022年の法改正における2つのポイントとは

脱炭素化に資する事業への投融資を増やし、地域の脱炭素化に向けた施策がスムーズに行えるようにした、2022年の法改正における2つのポイントを解説します。

  • 対象事業の支援をする機関の設立
  • 地方公共団体を対象にした財政上の措置に関する規定を追加

対象事業の支援をする機関の設立

環境省は2050年までに、脱炭素事業への資金支援を行う「株式会社脱炭素化支援機構」を設立すると発表しました。
200億円の出資を呼び水として1,000億円程度の脱炭素事業を実現し、新たなビジネスモデルを構築することで、脱炭素投資が数兆円規模に成長し、脱炭素社会の実現に寄与することを目的としています。

地方公共団体を対象にした財政上の措置に関する規定を追加

「地域脱炭素移行・再エネ推進交付金」を新設し、温室効果ガス排出量削減の取り組みに必要な費用を、国が地方公共団体へ支援する枠組みが追加されました。
またこの措置では、地方公共団体の「財政支援の努力義務」が規定され、脱炭素化に向けた取り組みを行うよう促しています。

 法改正によって企業に求められることとは

2021年と2022年の法改正で新設された基本理念により、国民も地球温暖化対策への協力が求められ、地方公共団体の動きも活発になると予想されます。
脱炭素化への取り組みは事業者である企業が先行していますので、これからは、国民や地方公共団体を巻き込み、実行力のある地球温暖化対策が求められることでしょう。

地球温暖化対策に活用される税とは

2012年10月から施行されている「地球温暖化対策税」をご存知でしょうか。創設の背景や概要を解説します。

地球温暖化対策税の概要

地球温暖化対策税は、石油・石炭・天然ガスといった化石燃料の利用者に対して、環境負荷に応じた課税を行うものです。
それぞれの税負担がCO2排出量1トン当たり289円になるよう税率が設定されています。

税が制定された目的

税が制定された目的は2つあります。ひとつは、課税による金銭的負担があることで、化石燃料由来のCO2排出量を抑制しようという動きが生まれること、もうひとつは、税収を再エネ・省エネ対策の強化に充てるためです。

まとめ

地球温暖化対策推進法は、国・地方公共団体・事業者・国民が一体となって地球温暖化対策に取り組むため、改正を重ねています。
脱炭素社会の実現に向け、事業者も具体的な行動を求められる時代になりました。

ホールエナジーは、再エネ導入やカーボンニュートラル実現のサポートを得意としています。
脱炭素化でお悩みのことがあれば、お気軽にお問い合わせください。

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  カーボンニュートラルへ向けた、

企業が取るべき具体的アクションとは?

参考記事

環境省 地球温暖化対策推進法と地球温暖化対策計画

環境省 地球温暖化対策の推進に関する法律の一部を改正する法律案の閣議決定について