コーポレートPPAと自己託送の違いとは?メリット・デメリットや向いている企業を解説

2023.05.01
カーボンニュートラルコーポレートPPA再生可能エネルギー脱炭素
コーポレートPPA

脱炭素化や再エネ導入について、高い目標を掲げる企業が多くなってきました。
再エネ導入には、様々なアプローチがありますが、方法の一つとして注目を集めているのが「コーポレートPPA」です。

そこで本記事は、コーポレートPPAと自己託送の違い、メリット・デメリットなどについて解説していきます。 再エネ導入やCO2排出量削減、電力消費量削減のために、ぜひ役立ててください。


  カーボンニュートラルへ向けた、

企業が取るべき具体的アクションとは?

コーポレートPPAとは

コーポレートPPAとは、電力が必要な企業(需要家)が、発電事業者(PPA事業者)から直接長期の買取をコミットすることで、新規の再生可能エネルギー発電所の開発・建設を行い、再生可能エネルギー導入を実現する仕組みです。
場合によっては、両者の間に小売電気事業者が必要となる場合もあります。

PPAとは

PPAとは、「Power Purchase Agreement」の略語で、電力購入契約を意味します。
発電事業者(小売電気事業者を含む)と電力使用者との間で結ばれる、再生可能エネルギーを発電するための電力契約のことです。

PPAの仕組み

コーポレートPPAでは、企業が電力を調達するまでに、需要家、PPA事業者、小売電気事業者の3者が関わり合いを持ちます。
それぞれの役割について、見ていきましょう。

 需要家(企業)

電気を使用する人を需要家と言います。
使用する代わりに、電気料金などをPPA事業者、または小売電気事業者に支払います。

PPA事業者(発電事業者)

太陽光発電の設置業者、持ち主をPPA事業者と言います。
持ち主であり管理責任を負う者でもあるため、太陽光発電システムなどにおける発電設備の無償設置、運用、保守を行います。

 小売電気事業者

小売電気事業者とは、電気を販売する事業者、送電網の所有者のことです。敷地外にある発電所から電気を調達した場合、小売電気事業者を介して需要家の元に送電されます。
PPA事業者は、送電網などにより電力を需要家に直接販売することが認められていないため、小売電気事業者が重要な役割を果たします。

自己託送とは

自己託送とは、自社で使用する電力を再生可能エネルギーとして調達する手段の1つです。
自己託送について詳しく解説していきます。

遠隔地で発電した電力を自社で使用する仕組み

自社の敷地外で発電した電力を、自社で使用する仕組みのことを、自己託送と言います。
基本的には、発電事業者と需要家が同じ企業、またはグループ企業でなくてはいけません。
契約は結ばず、小売電気事業者は介在しないなどといった特徴があります。

条件付きで第三者からの自己託送が可能

グループ会社などの密接な関係には無い企業同士でも、組合をつくるなどの条件を満たせば、第三者からの自己託送が認められています。
「自己託送(第三者所有型)」「自己託送(組合型)」などと呼ばれ、通常の自己託送とは区別されています。

コーポレートPPAの1つである「オフサイトPPA」との類似点が多いですが、小売電気事業者が介在しないことで、「直接型オフサイトPPA」などと呼ばれることがあります。

コーポレートPPAと自己託送の違い

遠隔地の発電所で電力を発電するなど、コーポレートPPAの1つである「オフサイトPPA」と似ている点の多い自己託送ですが、コーポレートPPA、自己託送(第三者型)と異なる点もあります。

それぞれの違いについて見ていきましょう。

コーポレートPPAと自己託送の違いの表
コーポレートPPAと自己託送の違い

契約の有無

自己託送の場合、発電所の所有者によって契約の有無が異なります。
発電所の所有者が第三者の場合、組合契約を結ぶ必要がありますが、発電所が自己所有の場合には契約を結ぶ必要はありません。

一方、コーポレートPPAの場合、企業と発電事業者がPPA契約を結ぶ必要があり、長期の契約を結ぶことが前提となります。

初期投資の有無

一般的な自己託送では、発電所の準備といった初期費用と運営費が必要となります。
一方、第三者所有型の自己託送とコーポレートPPAの場合、企業は設置費や運営費を負担する必要がないため、初期投資が不要となります。

小売電気事業者の介在の有無

自己託送の場合、小売電気事業者を介在する必要がありません。
一方、PPA事業者は、送電網などにより電力を需要家に直接販売することが認められていないため、コーポレートPPAでは小売電気事業者の介在が必要となります。

再生エネルギー賦課金発生の有無

特措法では「小売り電気事業者から電気の使用者に対して供給された電気」に対して再エネ賦課金を徴収すると規定されており、自己託送では再生エネルギー賦課金は発生しませんが、オフサイト型PPAでは発生します。

コーポレートPPAの種類

コーポレートPPAには、「オンサイトPPA」と「オフサイトPPA」の2種類があります。
それぞれの特徴について解説していきます。

オンサイトPPA

オンサイト型PPAとは、需要家が電力を使用する拠点の建物の屋上や敷地内に発電設備を建設する方法です。
資金調達から設備建設、保守・運営、設備廃棄まで全てを発電事業者が行うため、需要家は用地提供するだけでいい点がメリットと言えるでしょう。

オフサイトPPA

オフサイトPPAの場合、発電事業者は小売電気事業者を介して需要家に販売します。そのため、需要家は電力の料金に加えて、託送料や小売電気事業者への手数料がかかります。

なお、オフサイトPPAには、「フィジカルPPA」と「バーチャルPPA」の2種類があります。それぞれの特徴について見ていきましょう。

フィジカルPPA

  • 小売電気事業者が介在する。
  • 使用量と発電量が一致することは基本的になく、余剰と不足が発生する。
  • 再生可能エネルギーから発電した電力という、環境価値をセットで供給。

バーチャルPPA

  • 発電した電気は卸電力取引所に送電、実電気は小売電気事業者から別で供給。
  • 需要家は小売電気事業者に対し実電気の料金、発電事業者に対しPPA対価を支払う。
  • 電力と環境価値を切り離して提供。

コーポレートPPAのメリット

需要家から見た際の、コーポレートPPAのメリットについて解説していきます。

電気料金の削減につながる

コーポレートPPAでは、契約期間中の電気料金が固定されます。
近年、電気料金の高騰していることから、電気料金の削減にもつながります。

CO2排出量の削減につながる

再生可能エネルギー電力の調達、使用に移行することから、CO2排出量の削減につながります。
近年重要視されている、脱炭素社会やSDGs活動にも貢献することができます。

再生可能エネルギーの使用により企業価値が高まる

最近では、企業による環境問題、SDGsに対する取り組みも重要視されるようになってきています。
再生可能エネルギーの導入により、企業価値にも直結すると言えるでしょう。

コーポレートPPAのデメリット

需要家から見た際の、コーポレートPPAのデメリットについて解説していきます。

発電量が天候に左右される

太陽光や風力など、自然をエネルギー源としているため、発電量が左右されやすいです。
発電量の超過、不足が生じるリスクが懸念されます。

契約期間が長い

10年以上の長期契約となるケースが多いです。
設備は事業者の所有物のため、契約期間途中の契約破棄や処分はできないため、注意が必要です。

契約終了後は設備管理の負担が発生する

期間中は事業者が管理を行いますが、契約終了後は使用していた設備は需要家が行う必要があります。
契約延長などを行わない場合は、契約終了後の負担も想定しておかなければいけません。

自己託送のメリット

需要家から見た際の、自己託送のメリットについて解説していきます。

電気料金・CO2排出量の削減につながる

自社の設備で発電した電力を使用するため、電力会社から購入する電力量が減り、電気料金の削減が可能です。
また、再生可能エネルギーを使用するため、CO2削減にもつながります。

敷地外にも発電所を設置できる

従来の自家消費型太陽光発電では充分に設置することが難しい場合施設でも、自己託送を導入することで敷地外から送電することが可能となります。

余剰電力を活用できる

定休日に発電した電気などは、余剰電気となり余ってしまいます。
自己託送であれば送電ができるため、定休日ではない別の施設に送るなどすることで、無駄なく発電した電気を使用することができます。

自己託送のデメリット

需要家から見た際の、自己託送のデメリットについて解説していきます。

計画値と実際の電力量が一致しないとペナルティが発生する

自己託送を行う際には「計画値同時同量制度」に従って、発電量・需要量の計画値を報告する必要があります。
また、計画通りにならなかった場合は、その差分をインバランス料金というペナルティ料金として支払う必要があります。

高圧で大規模な発電所の設置が必要である

現在、自己託送制度が利用できるのは高圧の発電所と定められており、大規模な土地がない場合は利用できません。

コーポレートPPA・自己託送が向く企業

コーポレートPPA、自己託送に向いているのはどのような企業なのでしょうか。
共通して言えるポイントとして、以下のような点があげられます。

  • 電力量を削減したい。
  • 生成可能エネルギーの活用を計画している。
  • CO2の排出量を削減したい。
  • 脱炭素社会、SDGs活動に貢献したい。

それぞれ、向いている企業の特徴についてもご紹介していきます。

コーポレートPPAが向く企業

  • 契約のハードルが高いため、大手企業向き。
  • 契約期間が長いため、その間の倒産のリスクが低い企業。

自己託送が向く企業

  • 自家消費型太陽光発電で電気料金を削減したい企業。
  • 電気を共同で活用できるグループ企業がある企業。

コーポレートPPA・自己託送を導入する際のポイント

コーポレートPPA、自己託送を導入する際に、重要なポイントについても確認しておきましょう。
まず、初期費用、管理費、管理体制、契約、ペナルティの発生など、導入の際や管理を行う上で、それぞれ違いがありました。

また、オフサイトPPAでは補助金の利用も可能となっています。
メリット、デメリットを理解し、自社に合った方法を取り入れましょう。

まとめ

電力消費量、CO2排出量を削減のための選択肢として、コーポレートPPAと自己託送があげられます。
それぞれメリット、デメリットがあり、自社に合った方法を取り入れることが重要です。

また、近年では企業の環境問題、SDGsに対する取り組みが、企業の評価にも直結するようになってきました。
この機会にぜひ、導入を検討してみてはいかがでしょうか。

弊社ホールエナジーでは、再エネ導入のお手伝いをさせていただいております。コーポレートPPAのご支援なども行っておりますので、お気軽にお問い合わせください。

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参考資料

ホールエナジー  需要家が再エネを支える!コーポレートPPAを徹底解説
NET ZORO NOW コーポレートPPAとは?注目される理由とメリット、自己託送との違い
企業省エネ・CO2削減の教科書 オフサイトPPAとは?「オンサイトPPAとの違い」と「電気料金相場」