カーボン・オフセットとは?カーボン・ニュートラルとの違いや日本と海外の取り組み事例を解説

2023.03.02
ESGカーボンニュートラル再生可能エネルギー

本記事では【カーボン・オフセット】の概要や必要性を解説します。

カーボン・オフセットの仕組みや、日本と海外における取り組み事例もご紹介します。環境保護につながる取り組みを検討している企業様は、ぜひ参考にしてください。

  カーボンニュートラルへ向けた、

企業が取るべき具体的アクションとは?

カーボン・オフセットとは

人間の経済活動や生活で排出された二酸化炭素などの温室効果ガスについて、どうしても削減できない分の全部もしくは一部を、植林・森林保護・クリーンエネルギー事業(排出権購入)などで埋め合わせをする考え方を、【カーボン(=炭素)・オフセット(=埋め合わせる/相殺する)】といいます。

カーボン・ニュートラルとの違い

カーボン・オフセットと似た言葉に、カーボン・ニュートラルがあります。
これは、経済活動などで排出する二酸化炭素量と、植林などの活動により吸収・削減する炭素量を均衡させて、実質ゼロの状態にすることを言います。
他で埋め合わせる、というカーボン・オフセットの考え方から一歩進んだ取り組みですが、炭素量を均衡させるカーボン・ニュートラルを実現するための1つの手段がカーボン・オフセットなのです。

カーボン・オフセットが必要な理由

世界的な異常気象が毎年起こり、市民レベルで地球温暖化を実感するようになりました。
地球温暖化の原因と考えられている温室効果ガスの76%は二酸化炭素が占めており、産業革命以降、化石燃料の排出量を増やし続けている人間にとって、温室効果ガスの削減は喫緊の課題です。

2021年の「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」は、2011〜2020年の世界平均気温が産業革命前と比べて約1.09度上昇しており、今世紀末(2081~2100年)の世界平均気温は、産業革命前と比べて1.0~5.7度上昇する見込みであると発表しました。

世界におけるカーボン・オフセットの動き   

カーボン・オフセットの起源や世界へ広まった背景を見ていきましょう。

カーボン・オフセットが広まった背景

カーボン・オフセットは90年代後半にイギリスの植林NGOであるフューチャーフォレストが始めたと言われています。
その後、アメリカとイギリスを中心に広がり、企業やNPOなど多くの事業者がカーボン・オフセットを提供しています。

温室効果ガス削減は、世界の国々が一致団結して取り組むべき課題であると多くの人が認識し、削減が困難な部分はカーボン・オフセットで相殺する、という考え方が広く受け入れられるようになりました。

 日本の取り組み

環境省は2008年「我が国におけるカーボンオフセットのあり方について(指針)」に基づき、カーボン・オフセットフォーラム(J-COF)を設立し、情報収集や提供、各種ガイドラインの策定、先進的な取り組みを支援するなど、カーボン・オフセットの普及に努めています。
また、カーボン・オフセットに用いる温室効果ガスの排出削減量・吸収量を、信頼性のあるものと認証する「オフセット・クレジット(J-VER)制度」も同時期に創設しました。

このような背景から、法人向けにカーボン・オフセットのコンサルティングをおこなう企業が増えています。

カーボン・オフセットの仕組み

植林・森林保護・クリーンエネルギー事業(排出権購入)など、他の場所での活動により削減・吸収された温室効果ガスは、ルールに基づき定量化することで「クレジット」と呼ばれるものに変換でき、それを市場で取引することが可能となります。
カーボン・オフセットをする際は、このクレジットを購入し無効化することで埋め合わせをするのです。

カーボン・オフセットの実施方法

カーボン・オフセットの仕組みは大まかに理解できましたでしょうか?次は、日本や海外で具体的にどのような取り組みを行なっているか見ていきましょう。

    

1.オフセット製品・サービス

製品を製造・販売したりサービスを提供する事業者が行う取り組みです。製品やサービスのライフサイクルを通じて排出される温室効果ガス排出量を、クレジット購入によりオフセットします。

2.自己活動オフセット

企業が行う取り組みです。ビジネス活動由来の温室効果ガス排出量を、クレジット購入によりオフセットします。
これには、組織の事業活動やオフィスで使う電気・ガスの使用に伴って発生した二酸化炭素も対象となります。

3.会議やイベントによるオフセット

国際会議やコンサート・スポーツ大会などのイベント主催者が行う取り組みです。
イベントの開催に伴って排出される温室効果ガス排出量を、クレジット購入によりオフセットします。

4.寄付型オフセット

製品を製造・販売したりサービスを提供する事業者またはイベント主催者が、消費者に対して寄付を募り、クレジットを購入しオフセットする取り組みです。
地球温暖化防止活動への貢献や資金提供に興味のある顧客と、企業がコミュニケーションを取りながら行う活動です。

5.クレジット付き製品・サービス

消費者のオフセットを事業者が支援する取り組みです。
クレジット付きの製品やサービス・チケットを販売し、それを消費者が購入することで、購入者の日常生活で排出される温室効果ガス排出量を埋め合わせます。

6.非化石証書によるオフセット

石油や石炭などの化石燃料を使わず発電した再生可能エネルギーなどの「非化石電源」が持つ「非化石価値」を証書化したものを「非化石証書」といいます。非化石証書は市場で売買することができます。取引は「卸電力取引所(JEPX)」を介して行われます。

⇒【徹底解説】非化石証書とは?価格や購入方法、トラッキングなどについて

日本におけるカーボン・オフセットの取り組み事例

実際にはどんな事業者が取り組みに参加しているのでしょうか。上記で紹介した1〜6のどのオフセットに該当するのか、予想しながら読み進めてみてください。

出雲ガス株式会社

島根県出雲市を本社とする出雲ガス株式会社は、ガス事業に伴う保安業務、営業・修理・工事業務で発生する二酸化炭素排出量の一部をオフセットしました。
「神話の國出雲さんさん倶楽部」(同)という住宅用太陽光発電システムを設置した市民による団体から、クレジットを購入し150tのオフセットを実現しました。
この取り組みは出雲市内での環境価値の地産地消でもあります。これは「2.自己活動オフセット」に該当します。

全日本ダートトライアル選手権

日本自動車連盟公認の自動車競技である、全日本ダートトライアル選手権2021の第4戦「北海道ダートスペシャルinスナガワ」で、参加した競技車両・スタッフ車両、発電機から発生する二酸化炭素量を算定した後、北海道芦別市が木質バイオマス促進プロジェクト事業で創出したクレジットを購入することで、3tのオフセットを実現しました。
これは「3.会議やイベントによるオフセット」に該当します。

株式会社和光

時計塔が有名な銀座にある高級商業施設・和光本館は、2022年3月より太陽光発電由来の環境価値がついた再生可能エネルギー電気を導入しています。
これは、震災復興に向け福島県浪江町で太陽光発電を行う「浪江酒井第一太陽光発電所」からFIT非化石証書を購入することでオフセットが可能となり、和光本館で使用する電力を実質的に再生可能エネルギー化できます。
この取り組みは「6.非化石証書によるオフセット」に該当します。

海外におけるカーボン・オフセットの取り組み事例

次に海外の事例を見ていきましょう。日本の取り組みとの共通点・相違点はあるのでしょうか

スカンジナビア航空

北欧を拠点とするスカンジナビア航空では、WEBサイトで航空チケットを購入する際に、協力会社であるカーボンニュートラル・カンバニーが開発・管理しているクレジットを購入できます。
クレジットは複数のプロジェクトから発行されており、乗客は好きなプロジェクトを選択できます。

ジャガーランドローバー

イギリスの自動車メーカーであるジャガーランドローバーでは、新車を購入する際に、平均的な走行による二酸化炭素排出量をオフセットするクレジットをあわせて購入できます。車種別の二酸化炭素排出量は同社のWEBサイトで公開されており、クレジット価格は85~165ポンド となっています。

まとめ

温室効果ガス排出量を削減するために様々な努力が行われていますが、電気を大量に使う現代社会において、排出量をゼロにすることは不可能と言えます。そこで、カーボン・オフセットの概念が生まれました。

クレジットを購入することで温室効果ガスの削減に貢献できる仕組みは、企業や個人にとって参加しやすいため、今後ますます重要視されることでしょう。

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参考資料

環境省 カーボン・オフセット
農林水産省 カーボン・オフセットの事例
農林水産省  カーボン・オフセット
資源エネルギー庁 「非化石証書」を利用して、自社のCO2削減に役立てる先進企業