再生可能エネルギーが日本で普及していない理由とは?課題や海外の取り組み状況も解説

2024.07.31
カーボンニュートラル再エネ調達再生可能エネルギー

日本において、再生可能エネルギーの普及が遅れていることは、一つの課題となっています。
そこで本記事では企業のサスティナビリティ推進担当者へ向けて、再生可能エネルギーの普及が日本で遅れている理由を解説します。
日本における取り組みの現状や世界の状況を知ることから、まずははじめてみましょう。

カーボンニュートラルへ向けた、

企業が取るべき具体的アクションとは?

空白

日本で再生可能エネルギーの普及が遅れている理由

日本では、諸外国に比べて再生可能エネルギーの普及が遅れています。
その理由について見ていきましょう。

発電コストがかかる

発電コストが高いことが、理由の一つとして挙げられます。
日本は欧州に比べて発電コストが高く、太陽光システムの発電コスト(工事費やモジュールを含む)を比較すると、欧州が15.5万/Kwに対し、日本は28.9万/Kwとなっています。



※参考:経済産業省|再エネのコストを考える

再エネ割賦金が負担になっている

再エネ割賦金とは、再生エネルギー発電促進賦課金のことで、発電した電気を電気業者が買い取る費用を指しています。
この費用は私たち国民が毎月負担しており、2021年度は月間1,008円まで増加しました。
国としては、今後この負担を減らすために対策を行っていくとしています。

年度買い取り単価昨年度比標準家庭の負担(300kWh/月)
2018年度
(2018年5月分~2019年4月分)
2.90円/kWh0.26円(約10%)増年額10440円、月額870円
2019年度
(2019年5月分~2020年4月分)
2.95円/kWh0.05円(約2%)増年額10620円、月額885円
2020年度
(2020年5月分~2021年4月分)
2.98円/kWh0.03円(約1%)増年額10728円、月額894円
2021年度
(2021年5月分~2022年4月分)
3.36円/kWh0.38円(約13%)増年額12096円、月額1008円
2022年度
(2022年5月分~2023年4月分)
3.45円/kWh0.09円(約3%)増年額12420円、月額1035円
※※  参考:新電力ネット|再生可能エネルギー発電促進賦課金の推移”

諸外国と送電ネットワークが確立されていない

再生可能エネルギーの課題として、天候などに左右され、安定共有が難しいことが挙げられます。
そのため、海外では国際送電網という、国を超えて電気を送る仕組みが発展しています。
島国である日本は隣国へ送電することが難しい現状がありますが、同様に島国であるイギリスはすでに複数の海底送電線で他国とつながっています。
日本でも、他国と送電できるシステムを構築しなければなりません。

固定買取制度により価格競争力が弱まった

日本の太陽光発電の買取価格に関しては、固定買取制度というものが導入されています。
国内企業の国際競争力向上に貢献するため、国内メーカーの参入を促すことを目的として導入されました。
日本では欧州の2~3倍の価格で買い取られていましたが、業者がコスト削減せずとも利益が出せるようになってしまい、結果として価格競争が弱まってしまったのです。
固定買取制度による業績アップも短期的なものとなっており、課題が残っています。

日本の発電コストが高い理由

発電コストが高いことが、再生可能エネルギーの普及を遅らせている原因の一つであると、先ほどご説明しました。
なぜ、日本の発電コストは高いのか、その理由についても詳しく見ていきましょう。

人件費など運転維持費がかかる

日本は人件費が高い傾向にあり、工事の施工費用の増加につながっています。
さらに、人件費以外にも修繕費や運転維持費などがかかることも、コストが高くなる原因として挙げられます。

日照時間や地理的な問題がある

日本は日照時間が短いため、太陽光発電による発電量にも影響を及ぼしています。
さらに、平均風速が夏に落ちる傾向にあり、風力発電にも課題があるのが現状です。
また、平野部が少ないこと、地震が多いことなどの理由から、発電設備の設置場所が限られるといった地理的な要素もコストの高さに影響しています。

設備の初期投資費用がかかる

日本は海外に比べると、太陽光パネルや風力発電機の購入費用が高い傾向にあります。
さらに、設置費も諸外国と比較して高いことや、発電機メーカーと発電事業者の間における流通の流れや取引が非効率であることも、設備に関する費用の高騰に影響しています。

日本の現状と取り組み

日本の再生可能エネルギーに関する、取り組みの現状について見ていきましょう。

FIT制度の見直し

FIT制度とは、固定価格買い取り制度のことで、家庭や一般事業者が再生可能エネルギーで発電した電力を、電力会社が一定価格で買い取る仕組みです。
この買取価格を少しずつ引き下げる取り組みが行われています。
しかしながら、太陽光発電に偏っていることや、FIT制度の認定を受けたにも関わらず導入をしていないケースなどもあり、FIT法が改正されました。 これにより、メンテナンスを事業者による安全かつ安定的な運転が行われるようになり、導入していない場合にはハンデが加わるようになりました。

調整力の確保

太陽光、風力発電をはじめとする再生可能エネルギーの課題として、自然のものを資源とするために、天候などによって出力が変動することが挙げられます。
そのため、需要を一致させる供給力を火力発電に頼り、調整している現状があります。
再生可能エネルギーが普及すると、調整力不足になることが考えられるため、調整力の確保と調整力の脱炭素化が課題となります。

エネルギーミックスの実現

エネルギー基本計画の見直しも行われています。
従来の発電方法と再生可能エネルギーを組み合わせた上で、発電方法の中で再生可能エネルギーの比率を上げる取り組みである、エネルギーミックスも進められています。
2019年は、再生可能エネルギーの割合が18%程度でしたが、2030年には36~38%まで引き上げることを目標として掲げました。
エネルギーミックスが進むことで、コスト削減にもつながります。

海外の現状と取り組み

海外では再生可能エネルギーに関して、どのような現状があり、取り組みが行われているのでしょうか。

再生可能エネルギーの導入状況

海外では再生可能エネルギーが積極的に導入されており、再生可能エネルギー発電設備の容量(ストック)は年々増加傾向にあります。
世界全体のストックが、2018年は推計2,517GWに達し、年間約180GWのペースで増加していることもわかっています。


※参考:経済産業省|国内外の再生可能エネルギーの現状と今年度の調達価格等算定委員会の論点案

また、欧州では再生可能エネルギーの比率が、化石燃料を必要とする発電方法を上回っているという現状があります。
化石燃料に依存した発電方法がメインの日本に比べ、欧州各国は再生エネルギー先進国と言えるでしょう。

世界の発電コストは年々減少

太陽光発電、風力発電を中心に、再生可能エネルギーの発電コストは、世界的に見て減少傾向にあります。
理由としては、コスト面において競争が生まれているためで、導入を促すインセンティブの拡充が挙げられます。
さらに、太陽光発電にかかる設備投資におけるコストが下がっていることもあり、世界ではメガソーラープロジェクトが拡大していることが分かります。

環境問題に取り組む諸外国

環境問題へ対する取り組みが進んでいることも、日本と諸外国の大きな違いです。
各国の取り組みについて、ご紹介していきましょう。

・ドイツ
政策として再生可能エネルギー産業の育成を実施しています。

・中国
2006年に再生可能エネルギー法が制定され、FIT制度や再生可能エネルギー利用基準(RPS)制度が導入されました。
さらに、再生可能エネルギーの発電所の大幅な増設も決定されています。

・米国
再生可能エネルギーの導入促進を含む、環境・エネルギー関連の予算が配分されています。

また、EUは2019年に「欧州グリーン・ディール」を発表しました。
これは持続可能なEU経済の実現に向けた成長戦略の一環で、2050年の温室効果ガスの排出実質ゼロを目標の1つとして掲げています。

まとめ

諸外国と比較して、日本では再生可能エネルギーの普及が遅れている現状があります。
コスト面をはじめとする様々な原因や課題が挙げられていますが、化石燃料に頼った発電方式から、少しでも脱するための取り組みが進められています。
年々、環境問題に対する関心も高まりつつあります。
再生エネルギー先進国の取り組みを習い、国としても企業としても、再生エネルギーの普及にどう取り組んでいくのかが、今後重要な課題となるでしょう。

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参考資料

経済産業省|再エネのコストを考える
新電力ネット|再生可能エネルギー発電促進賦課金の推移
経済産業省|国内外の再生可能エネルギーの現状と今年度の調達価格等算定委員会の論点案