いつから始まる?どっちがお得?(新)最終保障供給

2022.08.12
コスト削減用語解説電力卸売市場電力業界制度

最終保障契約の契約数は2万件を超え、日々注目が集まっています。
契約先がなくなった需要家が駆け込むはずのセーフティネットは、もはや「いざとなったら」ではなく、最終保障契約に進むことが常態化しております。

そんないびつな状態を是正しようと、2022年3月頃から最終保障契約の料金体系の見直しが議論されてきました。なかなか答えがでない状態が続いていましたが、ようやくその議論も出口が見えてきました。

今日は、(新)最終保障契約がどんなものなのか?ということや、それに関連する市場連動型の料金について、書いていきます。

  カーボンニュートラルへ向けた、

企業が取るべき具体的アクションとは?

いつから始まるのか

電力・ガス取引監視等委員会の情報では、旧一般電気事業者が、通常メニューの受付再開時期の目処を発表次第、変更する。と言われておりました。

そして、ついに決まりました。
沖縄電力以外の送配電会社が、最終保障契約を9月1日から改定すると発表しました。
※(8月10日(水)に各社プレスリリース)

料金はどのように変わる?

では、(新)最終保障契約とは、どんな料金体系なのでしょうか。

一言で言えば、「下限付きの市場連動型プラン」です。最終保障契約は、すべての小売電気事業者の中で一番高い料金体系にする、というのが目的です。

市場連動型とは

ちなみに、市場連動型プランをわかりやすく噛み砕いて言うと「時価」です。
日本卸電力取引所(JEPX:http://www.jepx.org/)での、取引価格をそのまま需要家に転嫁するものですね。原価に一定の手数料を上乗せするため、基本的には小売電気事業者が赤字にならないような料金構造になっています。
一般社団法人 日本卸電力取引所は、我が国で唯一の卸電力取引市場を開設・運営する取引所です。

ここがポイント

なお、「下限付き」であることもポイントです。本来、市場連動型であれば、市場が安いときは、電力を安く調達できるというメリットもありますが、「下限付き」だとその恩恵を受けることができません。

2022年5月31日 電力・ガス取引監視委員会 第73回制度設計専門会合 資料

下限については以下の考え方です。
「補正項がマイナスの場合は、算定期間のエリアプライムプレイスの単純平均値が2019年度~2021年度で最も安い期間の平均値を下回った場合にのみ適用し、補正項を反映した最終保障料金単価については、標準メニューの従量単価を下限とする。」

これをかみ砕いて説明します。
市場価格が下がっても、基本的には(現)最終保障料金が下限で、市場価格が劇的に下がったとしても、標準メニューの料金が下限になる、ということです。

つまり、「高いときは高く(上限なし)、安いときも、それなりに高い」というのが、(新)最終保障契約の特徴です。繰り返しになりますが、最終保障契約を一番高い料金体系とし、自由競争の環境を取り戻すことが料金見直しの大きな目的となっています。

新電力の市場連動とは、どちらが安いのか

高いというイメージ

「新電力の受付再開もしていない状況で、下限付きの最終保障契約が始まってしまったら、大変だ」と思われる方もいるかもしれません。

たしかに今はほとんどの電力会社が新規での受け入れを行っていません。ただし、例外もあります。それは、市場連動型の電気料金プランを取り扱っている電力会社です。市場連動型プランは、前述のとおり、原価に一定の手数料を上乗せできるため、損失が出にくい料金構造であることが特徴です。

市場連動について、少し補足をします。
市場連動と聞くと、少し怖いと思われる方もいるのではないでしょうか。特に2021年冬の電力高騰が記憶に残り、「市場連動=高い=怖い」という印象がついてしまった方も多いと思います。

一方で、高くなったことばかりがクローズアップされますが、実は、平常時は、1kWhあたりの従量単価が10円だったりすることもありました。(※電力会社によります)安い時期もあったことも事実です。

ただし、当時はまだ市場(JEPX)が成熟しきれていなかったため、上限がありませんでした。市場は落ち着いていることが当たり前だったので、急に高くなる可能性についての対策が不十分だったのだと思います。

制度の改正

今は、入札価格が上がりすぎないよう、インバランス制度というものと連携させ、上限が決まるようになっています。
※2021年7月~2022年3月までは、インバランス制度の上限が80円(税抜)でしたが、2022年4月からは、上限が200円(税抜)に変更されています。(予備率が3%を下回る際に、上限が200円になる)

結論

前置きが少し長くなりましたが、ここからは、(新)最終保障契約と新電力の市場連動プランのどちらが安いのか(どちらを選んだほうが良いのか)を書いていきます。

価格としては、新電力の市場連動の方が安くなる可能性が高いです。

その理由は2つあります。

1.価格の下限があるか否か
2.基本料金単価の違い

価格の下限があるか否か

例えば、2023年6月に市場価格が13円/kWhとなったとします。

・(新)最終保障契約  22円~25/kWh前後
・新電力の市場連動プラン 18円/kWh程度

市場が安くなった場合、新電力の市場連動プランは、販売価格も安くなりますが、(新)最終保障契約は、「下限付き」のため高い水準を保ったままになってしまいます。

基本料金単価の違い

(新)最終保障契約の基本料金単価は、(現)最終保障契約の基本料金単価がそのまま残ります。約2000円/kW程度です。(エリアによって、多少の差があります)対して、新電力の基本料金単価は、1000円/kWを切る可能性が十分に考えられます。

・(新)最終保障契約   基本料金単価 約2000円/kW
・新電力の市場連動プラン 基本料金単価 約1000円/kW

特に基本料金の違いは大きいと思います。こうやって見ると、最終保障契約に移行後、次の行先がないとお考えの場合でも、新電力の市場連動プランを選んだほうが合理的であることが見えてきます。

固定型と市場連動のメリット・デメリット

今は、固定型で新規受け入れをできる会社は、ほとんどないですが、比較対象として、それぞれのメリット・デメリットを書いていきます。

固定型

メリット

どんなに市場が高騰しても、従量料金の単価が固定であること

デメリット

・電力仕入における市場高騰のリスクヘッジを踏まえた料金価格になっているため、少しマージンを多く上乗せした料金設定になっている(当然、想定リスク以上に市場が高騰し、電力会社側がダメージを負う可能性もあり、耐えきれなくなれば、昨今のように強制解約に至る場合もあります)。
・市場価格が落ち着いたときでも、(相対的に見て)高い料金を支払う必要がある。

その他

燃料費調整額は、別途変動費用として、発生する。

市場連動型

メリット

・必要以上に利幅が乗っていない可能性が高い(原価に一定の手数料を上乗せして販売しており、収益が担保されているため)
・市場が落ち着いた際には、安い電気料金が反映される。

デメリット

供給予備率が下がった場合は、料金が跳ね上がる可能性がある。

その他

ただし、いずれにしても、下限付きの最終保障契約を選ぶのであれば、下限が設定されていない市場連動型プランを選んだほうがお得になります。

まとめ

本日は、最終保障契約の料金見直しから、市場連動プランの特徴までを書いてきました。
市場連動型プランは、怖いというイメージもありますが、きちんと情報を集めてみると、メリットもあることが分かります。

一方で市場連動型プランは、専門性が高い分野でもあり、意思決定をするには、一定のハードルが存在します。
このような状況を背景に、当社では市場連動型に特化したコンサルティングサービスの提供を開始いたしました。

複雑化する電力購買の意思決定の一助になりましたら幸いです。
市場連動型プランについてのお困りごとがある際は、是非お気軽にお問い合わせ下さい。

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参考資料
・日本卸電力取引所(JEPX): http://www.jepx.org/
・経済産業省 : https://www.emsc.meti.go.jp/activity/emsc_system/pdf/073_07_00.pdf