不動産業界向け「非化石証書」を用いた再エネ導入事例

2022.07.01
ESGカーボンニュートラルコーポレートPPA再エネ調達環境価値非化石証書

昨今、気候変動リスクへの危機感が高まり、日本においても「ESG投資」が注目されています。
そんな中、特に再生可能エネルギー導入への動きが活発になっているのが、J-REITをはじめとする不動産業界です。

投資家からの厳しい目線やテナントのニーズに対し、どのような方法で再エネ化を実現し、どのようなアピールが出来るのか、事例をご紹介します。

  カーボンニュートラルへ向けた、

企業が取るべき具体的アクションとは?

不動産業界から注目が集まる「非化石証書」

非化石証書とは、使用している電力が実質再エネであることを証明するためのものです。

今までは電力会社の再エネメニューとしてしか調達できませんでしたが、2021年11月より、需要家や仲介事業者の直接参加を可能とした再エネ価値取引市場が開始され、新たな再エネ化の手段として企業からの注目が集まっています。(※FIT非化石証書のみ)

導入スピードの早さや比較的安価に再エネ化できる点で、業界に関わらずお取組みが広がっています。

その中でも特に、J-REITをはじめとする不動産オーナーが非化石証書を活用する理由はどこにあるのでしょうか。

NOIが下がるのに、なぜ再エネ導入を進めるのか?

一般的には、再エネ由来の電力を使用することは、コストアップになることが多いです。NOI※を上げることが大切である 不動産業界においては、逆行しているようにも見えます。NOIが下がることは、配当が減ることを意味するからです。
※Net Operating Incomeの頭文字をとったもの。 不動産賃貸事業やREIT(不動産投資信託)の運用で生じるキャッシュフローに該当し、半年や年間など決算期における賃料から管理費用や固定資産税などの諸経費を控除した純収益。

投資家のニーズ変化

では、なぜ不動産業界は、それでも再エネを導入するのでしょうか?そこには、不動産業界における明らかなニーズ変化が伺えます。

『配当よりも環境に優しくする方が、投資家の価値を高めることにつながっている』

ということではないでしょうか。
投資家は、金銭的なリターンよりも、環境への投資を要望しはじめています。
J-REITは、年々資産規模が増加しています。J-REIT市場で多くの売買シェアを持つ海外機関投資家が、CO2排出量削減への取り組み等を重要な投資判断材料の一つとしているのです。
弊社では、これまで再エネ導入の他に、電力コスト最適化の支援も行ってきました(今は、電力高騰により、お手伝いできる範囲が限られている状況です)

2016年から2019年ぐらいまでは、JREIT様のニーズは、コスト削減にありました。再エネメニューをおすすめしても、「コストアップになるのであれば、優先順位は下がる」という反応だったのですが、2020年前後から、チラホラREIT様からの再エネメニューの見積依頼が増えてきました。

今後も、再生可能エネルギー由来の電力の導入は、投資家の要望に従い、増加するものと思われます。また、GRESB等での加点を狙うという目的でも再生可能エネルギー導入は欠かせません。

なぜ、非化石証書なのか?

不動産オーナーの企業様にとって、非化石証書はメリットの多い再生可能エネルギー導入の手段になります。
導入事例も交えながらお伝えしていきます。

メリット① 特定のテナント分だけの取組みが可能

不動産オーナーにとっての最大のメリットは、「特定のテナント分だけ」「共用部だけ」などの部分導入が可能であるという事です。非化石証書は、電力契約と切り離して調達することが可能なため、このような部分的導入が叶うのです。

実際に保有物件の共用部を、非化石証書を用いて実質再エネ化された事例がございます。

(実際の取り組み事例は、本コラムの後半で紹介します) また、再エネ利用のご要望があったテナント分のみ証書購入を目指す動きも増えております。

メリット② スピーディーな取組みが可能

再生可能エネルギー導入には様々な手段がありますが、今年度の導入は間に合わないというお声をよく伺います。

対して非化石証書は、購入のお申込みから証書の取得まで、2ヶ月~3ヶ月程でお取組みされる企業様がほとんどです。GRESBなどの各種イニシアチブへの報告や、プレスリリースなどのPRも今年度から反映が可能です。

投資家へのアピール、テナント様への付加価値として、短期間で再エネ化を目指したい企業様にとって大きなメリットです。

メリット③ 電力市場に左右されずに取り組める

昨今の電力市場高騰により、再エネメニューへの転換を諦めているというお声もよく伺います。企業様にとって、電気料金の大幅な値上がりに加え、再エネ化によるコストアップは懸念点のなかでも大きなウエイトを占めております。

一方で、投資家から厳しい目線を向けられる不動産オーナー様からは、再エネ化も「何もしないわけにはいかない」というお声が多いのも実状です。そんな中で、電力契約と切り離して購入ができる非化石証書は取り組みやすいと好評です。

実際に、再エネメニューへの変更は電力会社に見積りを出してもらえなかったので、非化石証書の購入で再エネ化をする、という事例もございます。(2022年8月購入予定のJ-REIT様)

非化石証書は1kWhあたり0.3円(税抜)~と、多くの場合電力契約を再エネメニューに切替えるよりも、比較的安く購入できる点も、取り組みやすさのポイントです。

不動産業界の導入実績

ホールエナジーでは、J-REITはじめ不動産業界の企業様の再エネ化を、多数ご支援させて頂いております。
ここでは、一部の導入実績をご紹介させて頂きます。

非化石証書導入事例

▼大和ハウスリート投資法人の脱炭素を支援
▼アドバンス・レジデンス投資法人の脱炭素を支援

再エネ導入事例(非化石証書以外)

▼ジャパンリアルエステイト投資法人様

また、2022年5月に開催した非化石証書活用についてのウェビナーには、不動産業界の企業様、31社にご参加にご参加いただきました。
制度や仕組みへの理解が深まったことでお取組みを進め易くなったと、嬉しいお声をいただいております。

まとめ

現在、世界の流れはカーボンニュートラルの方向へ確実に向かっており、国内でも、電気料金の異常な高騰を受け、化石燃料に頼るのではなく、太陽光や風力といった再生可能エネルギーの使用を推進しようという流れが非常に強まっています。

ホールエナジーはこれからも不動産業界の皆様に有益な情報をお届けし、脱炭素化のご支援を行っていきます。

再エネに関するお困りごとがある際や、非化石証書の購入をご希望の方は、
是非お気軽にお問い合わせ下さい。

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参考資料

・2021年度第1回再エネ価値取引市場のオークション及びトラッキング実証の開始について 資源エネルギー庁 (meti.go.jp)
https://www.enecho.meti.go.jp/category/electricity_and_gas/electric/nonfossil/page/20211021.html
・脱炭素ポータル Sustainable Japan https://sustainablejapan.jp/
・アドバンス・レジデンス投資法人 https://www.adr-reit.com
・ジャパンリアルエステイト投資法人 https://www.j-re.co.jp/
・大和ハウス・アセットマネジメント株式会社 https://www.daiwahouse-reit.co.jp/