コーポレートPPAとは?仕組みやメリット・デメリットを徹底解説
これまで日本の再エネを推進してきたのは、FIT制度によるものが大きいと言われています。
2012年にFIT制度を使い、太陽光発電を始めた場合、20年間、40円/kWh前後で買い取ることが約束されていました。
これによって、発電事業者側は、事業性を担保しやすかったこともあり、発電所が加速度的に増えたという背景があります。ですが、年々FIT買取価格は下がり続け、2022年度の太陽光発電の買取価格は、10円前後となっています。
その結果、発電事業者としても、投資回収が今までより難しくなり、太陽光発電所の建設が今までよりも進みづらくなっています。
このような背景や、脱炭素社会を目指し、追加性のある再エネへの注目が集まっていることも後押しし、コーポレートPPAへの関心が高まっています。
カーボンニュートラルへ向けた、
企業が取るべき具体的アクションとは?
コーポレートPPAとは
- 再エネ発電所から生まれる「電力」や「環境価値」を
- “長期間(10年~20年)”“固定(に近い)条件”で
- 需要家が直接発電事業者から購入する契約(=PPA)
- この契約により新規の再エネ発電所の開発・建設を実現する
まさに、「コーポレートPPA」とは、「需要家」が長期の買取をコミットし、再エネ導入を実現する取り組みです。
=国民負担のFITに代わり、需要家自らが「新しい担い手」になる とも言えるのではないでしょうか。
需要家がコミットすることを前提に、発電事業者は新しい発電所建設に踏み切ることができるということですね。
コーポレートPPAを取り組むメリット・デメリット
ここでは需要家と発電事業者のメリット・デメリットについて見ていきます。
需要家にとってのメリット・デメリット
メリット①
追加性が高く評価され、対外的なPRができる
特に海外では、「追加性」が強く求められます。追加性とは、「まだ世の中にない再エネを、自分たちが関与することで生み出した」ということです。これは、再エネを導入する中でも、最高ランクに位置づけられており、世の中でも高く評価されます。サスティナビリティへの取り組みとしては、レベルの高いものと言えます。
メリット②
再エネ価値を長期間に渡って確保
日本では、今後の炭素税の導入等も検討されています。そうなれば、環境価値は、争奪戦になることが予想されますが、CPPA契約があれば、市場の影響を受けずに環境価値を享受できます
メリット③
PPA契約部分※の価格の安定化
発電事業者と長期契約を結ぶため、PPA契約部分の価格安定化が図れます。特に最近では、化石燃料の価格高騰の影響等も受け、電力価格はどんどん上昇しています。将来が読みづらい現代だからこそ、価格を固定化することで、将来の価格上昇への備えができます。
金融商品の長期固定金利に似ているかもしれません。
※PPA契約分とは、下の図の青い部分を指します。後ほど詳しくご説明します。
デメリット①
結果として、将来、環境価値・電力価格が上がらない可能性
上記で触れた「再エネ価値の確保」と「価格の安定化」は、あくまでも将来に対して、先に買い物をすることになります。将来、環境価値が想定よりも、簡単に環境価値を入手し続けることができた。電力価格はそこまで上がらなかった。ということがあれば、先行して、コーポレートPPAを結んだことが結果的にマイナスに働いたということが起こります。その場合は、価格面でのデメリットがあると言えるでしょう。
ただし、地球環境に対しては、早ければ早いほどメリットがあります。そう考えると、今から取り組みことも大きな意味を持つと言えそうですね。
発電事業者にとってのメリット・デメリット
メリット①
事業性の担保が予測しやすい
長期間買ってくれる需要家がいるということは、発電所建設の投資回収ができるということです。FIT買取価格が下がってきている中、買い手が見つかるということは、非常に重要なことです。
デメリット①
将来は、もっと高く販売することができるかもしれない
今後、電力価格が大幅に上昇した場合、契約時に結んだPPA価格が、
結果としては安すぎたという恐れがあります。
これは、発電事業者も需要家にも、どちらも抱えるデメリット(リスク)といえそうです。
「今後、どうなるか読みづらいので、双方が納得する価格で、今のうちに長期契約結んでおきましょう」というものですね。
フィジカルPPAとバーチャルPPAとは
ここでコーポレートPPAから少し離れ、今後注目されるであろう2つのPPAを少し触れておきます。
フィジカルPPAとは
発電事業者が発電した再エネ電気は、契約している需要家へ届けられます。日本の電気事業法では、発電事業者が直接電気を需要家に届けることができないため、スキーム上小売電気事業者が間に入ることになります。
参考:公益財団法人 自然エネルギー財団『日本のコーポレートPPA『契約形態、コスト、先進事例』
ただし、コーポレートPPA分だけでは、需要家様のすべての使用量をリアルタイムですべて送ることは困難です。したがって、不足分(太陽光では発電しない部分)は、中に入っている小売電気事業者が電気を送ることが一般的です。
下の図でいくと、青い部分はPPA契約を結んだ発電事業者の電気を、小売電気事業者が需要家に届けます。
一方で、グレー塗部分(夜間等)は、小売電気事業者が、調達した電気を需要に届けます。
フィジカルPPAの特徴
・使用量と発電量が常に一致することは基本的にない
・発電量と使用量のバランスにもよるが「余剰」と「不足」が発生
→「環境価値」は余剰部分含め100%取り込むことが可能
→「電気料金の固定化」は基本的に一致部分のみ可能
環境価値は、発電した分すべてが需要家の物とすることが可能ですが、実電気は、一部不足が生じてしまうのが特徴です。
バーチャルPPAとは
発電事業者が作った電気は、小売電気事業者を通して、需要家へ届けられるのではなく、卸電力取引所に流れていきます。そして、実電気は、小売電気事業者から別で供給されるスキームとなります。
少し難しいのは、お金の流れです。
需要家は、小売電気事業者に対し、実電気の料金と、発電事業者に対し、PPA対価を支払います。
その際のPPA対価は、PPA価格(契約時に結んだ価格)-JEPX価格にて算出されます。
計算式で表すと、
需要家負担=小売電気事業者への電気料金+発電事業者へのPPA対価 となります。
例)小売電気事業者が定める料金20円、PPA契約15円、JEPX取引価格13円 需要家が支払う料金イメージ
20円+(15円-13円)=22円 となります。
例)小売電気事業者が定める料金24円、PPA契約15円、JEPX取引価格17円需要家が支払う料金イメージ
24円+(15円-17円)=22円 となります。
JEPX取引価格が高くなると、PPA対価は、マイナスになる(戻ってくる)のが特徴です。
ただし、JEPX取引価格が高くなった際には、小売電気事業者の料金も上がる可能性があり、仕上がりとしては、同程度に落ち着くことが考えられるでしょう。
市場価格が上がれば、支払うPPA対価が下がり、小売電気事業者への料金が高くなる傾向
市場価格が下がれば、支払うPPA対価が上がり、小売電気事業者への料金が安くなる傾向
がバーチャルPPAの特徴です。
※なお、日本における上記バーチャルPPAは、現時点では実現できません。現在、実現できるようにルール改正が進められている最中です。
2つのPPAのポイント
ここまでのところで、2つのPPAの特徴を少し整理しておきます。
フィジカルPPAのポイント
CPPA発電電力を小売事業者経由で自社に取り込むシナリオ
電力:需要家が利用 環境価値:需要家が利用
【ポイント】
- CPPA発電分について、「電気料金の固定化」 が可能
- 対象施設を決めた上で、電力会社とCPPA対応含む契約が必要 ✓ 発電所立地エリアと対象需要エリアの一致が基本必要
バーチャルPPAのポイント
CPPA発電電力は自社に取り込まず、環境価値のみ取得するシナリオ
電力:市場換金 環境価値:需要家が利用
【ポイント】
- CPPA負担が市場価格と逆連動するため間接的ではあるが、「電力調達コストのヘッジ」はある程度期待できる。
- 電力契約とは切り離されるため、対象施設の入れ替え含め自由度高い
- 発電所立地エリアと対象需要エリアの一致は不要
まとめ
日に日に脱炭素への関心は、高まっています。
企業の脱炭素への取組は、国際的なESG投資の潮流の中で、自らの企業価値の向上につながることが期待できます。また、気候変動の影響がますます顕在化しつつある今日、先んじて脱炭素経営の取組を進めることにより、他者と差別化を図ることができ、新たな取引先やビジネスチャンスの獲得に結びつくものになっています。そして、何より私たちが住む地球の環境に貢献することに繋がります。
弊社ホールエナジーでは、再エネ導入のお手伝いをさせていただいております。コーポレートPPAのご支援も行っておりますので、お気軽にお問い合わせください。
メールマガジンで再エネや電力に関する
お役立ち情報を配信しています
空白
参考資料
・公益財団法人 自然エネルギー財団:『契約形態、コスト、先進事例』
・オフサイトコーポレートPPAについて – 環境省
・脱炭素ポータル Sustainable Japan