脱炭素化に向けたCDP評価とは
~はじめに~
近年、2050年カーボンニュートラルに向けて、再生可能エネルギーの導入は社会的にも注目が集まっているトピックスです。
各企業の中でも確実に再生可能エネルギーの導入が進んでおります。
そんな中、ESG投資の観点でも脱炭素化への取り組みは大きな意味を持つようになりました。
そして、民間企業も脱炭素化という大きな波の中で生産活動自体も変化していかざる得ない状況に追われています。投資という考え方にもどのようなものに価値を置くのかという点でとても重要な局面にあるといえます。
今回は、投資家からも注目が集まるCDPの企業評価について、まとめてみたいと思います。
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① 再生可能エネルギーを重視するCDPの企業評価
今日、多くの投資家が脱炭素化に向けて、気候変動に対する企業の取り組みを評価する NGO(非政府組織)の CDP(旧 Carbon Disclosure Project)による調査などを重視しています。
CDPは、株式の時価総額が大きい世界各国の企業に質問書を送付して、その回答をもとに気候 変動の取り組みを評価するものになっています。
また、金融機関など投資家からの要請に加えて、企業の依頼によって取引先も対象に加えています。
例えば自動車メーカーが取引先の鉄鋼メーカーを評価の対象に加えるようにCDPに依頼するなど、最近は投資家よりも企業からの依頼による件数が多くなっており、 2020年には世界の2万社以上にCDPから質問書を送り、約9600社が回答済みといった結果になりました。回答した企業の株式時価総額を合計すると、世界全体の約 50%に相当する規模にも及びます。
・日本においてCDPの調査
日本の企業は1100社以上が対象になり、回答数は約850社にのぼっています。
日本を代表する有力企業が CDP の質問書に 回答して評価を受けており、 質問書には気候変動のリスク・機会に対する認識や戦略、削減活動、CO2 排出量の実績値と計画値、自然エネルギーの利用状況などの回答項目があります。
回答の内容に応じて、企業ごとに最高 レベルの「A」から最低レベルの「D-」まで 8段階で評価する仕組みになっており、日本の企業は 2020 年に53社が気候変動の A 評価を受けた。前年の38社から大幅に増えています。
この数字からも分かる通り、今後の脱炭素化に向けた取り組みは、有力企業にとっており重要課題の一つとして取り上げられています。
② CDPの評価におけるCO2排出量とは
CDPの評価を受けるにあたっては、国際規約の「GHG(温室効果ガス)プロトコル」に準拠して CO2排出量を算定することが推奨されています。
GHGプロトコルでは CO2排出量を3段階に分けて計算します。
企業の生産・販売活動による直接排出量(スコープ1)のほかに、電力や熱を購入して消費 する場合にはエネルギー供給者の排出量に基づく間接排出量(スコープ2)を加え、さらに取引先を含むバリューチェーン全体の排出量(スコープ3)も報告・評価の対象になっています。
このうちスコープ2 の電力消費による間接排出量については、「ロケーション基準」「マーケット基準」の2つの算定方法があり、この両方の基準でCO2排出量を算定して報告 することが望ましいとされています。
・「ロケーション基準」(Location-based):企業が活動する地域における電力系統全体の平均CO2排出係数をもとに計算する。
・「マーケット基準」(Market-based):企業が個別に契約する電力のCO2排出係数を適用できる。
2種類の算定方法のうち、マーケット基準では自然再生可能エネルギーの電力をより多く調達する企業の取り組みを評価でき、自然エネルギー由来の証書も対象になります。
日本国内ではグリーン電力証書と J-クレジット(再エネ発電由来)のほか、非化石証書を組み合わせた電力もマーケット基準の対象です。
※CDPの報告の基準になるGHG プロトコルでは、証書を利用した電力のCO2排出量は一律ゼロで算定できます。これに対して日本の温対法(地球温暖化対策の推進に関する法律)では、証書と組み合わせる電力のCO2排出係数を使って厳密に計算しなくてはならない。証書を組み合わせても、 電力のCO2排出係数は必ずしもゼロにはなりません。このようにGHGプロトコルと温対法によるCO2排出量の算定方法には違いがあり、それぞれの算定方法を適用する必要がある。
③ 原子力発電における評価とは
温室効果ガスの排出量を算定するGHGプロトコルでは、自然エネルギーに加えて原子力で発電した電力でも、CO2を排出しない点で同様に評価をすることができます。企業が原子力を多く含む電力を購入すれば、 スコープ2のCO2排出量を削減できるようになっています。
この問題を補うために、CDPでは自然エネルギーに対する取り組みに関する質問項目を設けて評価に反映しています。 企業が年間に消費したエネルギーの量を「再生可能エネルギー」と「非再生可能エネルギー」に分けて回答する項目が存在しています。
エネルギーの消費量のうち、再生可能エネルギー(自然エネルギー)の占める比率が 10%、25%、50%、75%、99%以上、と高くなるほど評価が上がっていき、原子力は非再生可能エネルギーの欄に記載します。
この質問によって自然エネルギーの利用状況を評価に反映させることができ、日本で購入できる証書ではグリーン電力証書と J-クレジット(再エネ発電由来)が CDPの評価に おいて自然エネルギーの電力として有効です。非化石証書(再エネ指定)を組み合わせた電力も 自然エネルギーとして認めらますが、CO2排出係数の低い電力と組み合わせて利用することが推奨されています。さらに自家発電を含む発電量についても、自然エネルギーの比率によって評価が変わり、比率が50%超と100%になると評価が高くなります。
まとめ
再エネ導入に関する取り組みはCDPの評価などからも分かる通り、国際的にみてもとても注目度の高いものになっています。
評価のされ方もどのように脱炭素に取り組むかによっても大きく変わってくることもございます。
評価基準について、しっかり理解し取り組むことが重要です。
そしてサプライチェーンとしての脱炭素化も今後拡大していくことになりそうです。
弊社、ホールエナジーでは、小売りからの再エネ電力調達や太陽光発電の導入などにも柔軟にご対応することが可能です。もちろん、お客様の状況に合わせて取り組みの方法も多種多様ではございますので、まずはお気軽にお問い合わせ頂ければ幸いです。
コラム参考資料
※1:電力調達ガイドブック第4版 自然エネルギー財団