電気料金高騰の一因!「燃料費調整制度」とは?

2022.06.02
カーボンニュートラル電力卸売市場電力業界制度

 

2050年に向けてカーボンニュートラルをいざ取り組もうという定か、電気料金の高騰化が起こり非常に困られている企業様も多いのではないでしょうか。

今回は電気料金の高騰における一部容易である「燃料調整制度」について掘り下げて行きたいと思います。
(本コラムは、2022年5月20日にリライトしています。)

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燃料費調整制度とは?

燃料費調整制度とは、火力発電に用いる燃料(原油・液化天然ガス・石炭)の価格変動を毎月の電気料金に反映させる仕組みのことです。日本は発電に必要な燃料のほとんどを輸入でまかなっています。

その為、世界の経済状況や、為替レートの変動などが燃料価格に大きく影響します。

このような事業者の効率化努力の及ばない燃料価格への影響を外部化することにより、事業者の経営環境の安定を図る目的で導入された制度になります。

燃料調費制度の背景

1996年1月から燃調費制度が導入されました、当初は年4回の頻度で料金改定が行われていました。その後2008年に燃料価格が大幅かつ急激な高騰を背景に、迅速な料金反映をする為に2009年に制度が見直しをされ、料金反映までの期間を毎月に変更されました。

燃料費調整制度と再エネ賦課金の違い

毎月の請求書に徴収される燃料費調整額と再エネ賦課金について、違いがよくわからない方もいらっしゃるかと思います。違いについて見ていきたいと思います。

再エネ賦課金とは何か

「再生可能エネルギー発電促進賦課金」とは、「再生可能エネルギーの固定価格買取制度」によって定められた、電力会社等が買い取りに要した費用を、電気料金の一部として、使用量の皆様にご負担いただく制度になります。

金額は国が一律に定めるものではない

燃料調整額は化石燃料の価格や使用量により各電力会社によって異なるものの、再エネ賦課金は国が一律で定めた買取単価により算定されます。

単価がマイナスにならない

燃料調整額は準となる燃料調達価格は基本料金や電力量料金に含まれているため、その基準と比較し、調達価格が上がると燃料費調整額はプラス、下がるとマイナスになります。一方で再エネ賦課金は先にも述べた通り国が一律で定めている為マイナスになることはありません。

燃料費調整額とは?

燃料費調整制度では「基準燃料価格」と「平均燃料価格」の差分を基に「燃料調整単価」が算出され、その月の電力使用量に掛け合わせることで「燃料費調整額」として各需要家の電気料金反映させます

それでは東京電力エナジーパートナーを例にそれぞれ詳しく説明していきます。

基準燃料価格

料金設定の基準となる燃料価格のことを言い、平成24年1月~3月の貿易統計価格を基に設定されています。

 平均燃料価格

原油・LNG・石炭それぞれの3カ月の貿易統計価格の実績を基に算出されます。

3つの原料は熱量や数量単位が異なり、また実際に火力発電所などで使われる量も調達状況などで異なります。そのため、計算ではそれらを考慮した係数を3つα、β、γ(原油換算率×燃料種別々熱量構成比)として計算します。

これら2つの差分から調整単価が算出され、

基準燃料価格より平均燃料価格が安い場合には、マイナス
基準燃料価格より平均燃料価格が高い場合には、プラス

という形で各需要家の電気料金に反映される仕組みになります。

ちなみに、実際にこの燃料価格の差分は2カ月後の電気料金に燃料調整単価として反映されることとなるため実際に電気料金の請求書を見る際には、
3~5カ月前の燃料価格の影響を受けているという認識をもっておくとよいでしょう。

現在の燃料調整額

それでは、現在の燃料調整単価の推移はどうなっているのでしょうか。

下の図が2020年7月から2022年5月までの各エリアの燃料調整単価の推移です。

2020年の6月頃には全エリアともにマイナスとなり、徐々にマイナス幅が大きくなっていたものの、2021年に入ると徐々に値上がりしていき、2021年12月時点では、ほとんどのエリアでプラス調整となっていしまっています。

※新電力ネット様 参照

仮に東京電力管内で月間100000kwhの電力を使用している需要家の場合

2020年12月 100,000kwh×-1.05円/kwh=-105,000円
2021年12月 100,000kwh×-4.48円/kwh=-448,000円

となり同じ電力使用量にも関わらず、燃料調整単価の高騰により、約34万円も多くの電気料金を支払うこととなっていたのです。

下記グラフが各燃調の推移となります。
原油・LNGは分かりやすく2021年から常に右肩上がりの状態が続いています。
石炭についても上がり幅が少ないものの、上がり続けているのが分かります。

この燃料調整単価は燃料価格の取引状況から今後も高騰傾向が続くことが予想され、需要家にとっては更なる値上がりとなり、苦しい状況が続いていくこととなりそうです。

燃料調整費高騰に対して対策

燃料調整額がプラス単価になると、使用量が多い企業様では電気代高騰に直結されるため、対策として再エネ発電(自家消費型太陽光発電など※(再エネ調達手段「オンサイト自家消費」とは?))や省エネ対策などを取り入れるなどの対応が求められます。

国内・国外での動き

電気料金の高騰において、国内・国外ではどのような動きを取っているのか把握しておきましょう。

国内の動き

ウクライナ情勢やLNG(液化天然ガス)などの影響を受け、電気料金が高騰している中、日本政府はロシアからの石炭輸入をストップすることを決めました。
それに伴い、山口環境相から「電気料金上昇に対し理解をしてほしい」との呼びかけが行われています。
また、欧州では、「(電気料金の上昇は)脱ロシアを進めるコストだと捉えられている」とのことです。各電力会社は、ロシア以外の代替調達先を探すことになります。

世界中で脱ロシアの動きが高まる中、更なるエネルギーの争奪戦が予想され、今以上に電気代が上がることが予想されます。
また、この状況を受け、岸田総理や山口環境相は、再エネへの取り組みを加速させるとも発言されました。

国外の動き

ドイツでは、脱ロシア依存を目指し、再エネへの取り組みをさらに加速させます。
「2035年までに、ほぼすべての電力を再エネで賄う」と発表しました。
SDGsの中心である欧州の動きは、日本も追随することが予想されます。燃料が有限であるということを突き詰められた今、再エネへの取り組みの加速は、必須と言えます。

まとめ

今回は燃料費調整制度について見ていきました。

燃料調整単価は、ほとんどの小売り電気事業者が、各エリアの旧一般電気事業者と同じ単価を採用しており、電力会社毎の違いがなく、見直しの余地がないと言っても過言ではありません。

燃料調整単価が値上がりしている今、電力を使う需要家としてできることは、適切な知識をもって電力会社の選定を行うことです。

しかしながら、現在多くの電力会社が新規受付停止をしてる中、電力会社の選定を行うのも非常に困難ことも事実です。

弊社、ホールエナジーでは、電力全面自由化元年からの知見を活かしコスト削減を実現するための電力オークションはもちろん再エネ導入の実現に向けて、柔軟に対応することが可能です。

もちろん、お客様の状況に合わせて取り組みも多種多様ではございますのでまずはお気軽にお問い合わせ頂ければ幸いです。

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参考資料
燃料費調整制度とは(高圧・特別高圧)│法人のお客さま│東京電力エナジーパートナー
燃料費調整制度について|電気料金について|資源エネルギー庁
燃料費調整単価の推移|新電力ネット