容量市場とは?導入の背景・価格が決まる仕組みを解説
電力小売り全面自由化以降、多くの小売電気事業者が参入し、電力分野のビジネスは活発化していきましたがその一方で、新たな課題も生まれているのも事実です。
また、2020年からは、新たに将来の供給力(kw)を取引する「容量市場」という市場が設立されました。
本記事では、「容量市場」とはどのようなものであるかご紹介していきます。
企業として環境保護に取り組みたい、具体的な施策について知りたいという方はぜひご一読ください。
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容量市場とは?
容量市場は電力市場の一部で、電力の需要と供給の調整を目的とします。
発電能力の確保と安定供給を促進し、需要ピーク時の電力不足を防ぐ仕組みです。発電事業者は将来の需要予測に基づき一定容量を提供し、市場から報酬を受け取ります。
需要家や小売業者は必要な容量を購入し、需要予測と実際の需要のずれに応じて取引が行われます。
容量市場が導入された背景
容量市場の制度はなぜ導入されたのでしょうか。その背景について解説していきます。
電力自由化・再エネ拡大に伴う将来的な供給力不足の懸念
容量市場の導入背景として、再エネ拡大と電力調達の多様化による影響が挙げられます。再エネ拡大によって、太陽光や風力発電の導入が進み、これらの発電形態の特性である発電量の不安定さから安定した電力供給が課題となりました。
需要のピーク時に十分な発電能力を確保するため、発電事業者に対して安定供給を約束させ、需要家に確実な電力供給を確保することが容量市場の目的です。
同時に、電力の小売自由化により需要家や小売業者が電力供給について選択できるようになり、需要家の電力調達方法が多様化しています。需要家が容量市場に参加するようになったことで、需要予測と実際の需要のずれに柔軟に対応できるメカニズムが構築されるようになったことも変化の一つです。
諸外国での供給力確保の取り組み
海外では、容量市場の導入は電力供給の安定性と再生可能エネルギーの統合に向けた取り組みの一環として進んでいます。
欧州連合(EU)諸国では、再エネ導入の増加に伴い、需要ピーク時の安定した電力供給が課題となり、容量市場が採用されています。
例えば、イギリスでは容量市場制度が採用され、需要家や発電事業者は容量提供に対して報酬を受け取ります。
アメリカも容量市場を採用しており、各州で異なるアプローチが見られます。
諸外国において供給力を確保する仕組みとして、容量メカニズムや、市場価格を意図的に引き上げるスパイク手法などがあります。
投資回収の機能に関しては、卸電力市場のみに委ねている国もあり、各国さまざまな方法でアプローチを行なっています。
容量市場に参加できる電源
容量市場に参加できる電源は、主に需要のピーク時に安定した発電能力を提供できるものです。
これには、基本的には安定的で可変性が少なく、需要の波動に対応できる発電形態が含まれ、代表的な電源には以下があります。
- 火力発電所
火力発電所は比較的安定した発電を提供し、需要のピーク時に迅速に電力を供給できるため、一般的に容量市場に参加しているケースが多いです。
- 水力発電所
水力発電所は水の流れに頼る安定した発電形態であり、需要ピーク時に安定した電力供給を行うことができます。
- 原子力発電
原子力発電は連続して安定した発電を提供できるため、一定の需要に対する安定供給に適しています。
- 地熱発電
地熱発電は地中の熱を利用して発電するため、連続的かつ安定的な発電が可能で、容量市場に適しています。
これらの発電所は、需要がピークに達する時に急速に電力供給を増減できる特性があり、容量市場において需要家に確実な電力供給を保障する役割を果たしています。
また、再生可能エネルギー源も一部、需要のピーク対応が可能な形態で容量市場に参加することがあります。
容量市場の価格が決まる仕組み
容量市場で取引されるのは「4年後の電力供給力」です。
発電事業者が売り手、小売事業者が買い手となり、「電力広域的運営推進機関(広域機関)」を介して取引が行われる形となります。
まず、「電力広域的運営推進機関(広域機関)」が、4年後使われる見込みの電気の最大量(最大需要)を試算し、この量を満たすために必要な「4年後の電力の供給力」を算定します。
そしてこの調達量をまかなうために、「4年後に供給が可能な状態にできる電源」を募集しオークション方式で価格が安い順に落札される。という仕組みで価格が決定することとなるのです。
日本の容量市場が抱える課題
日本の容量市場にはいくつかの課題が存在しています。まず、需要予測の不確実性が大きいことが挙げられます。需要のピーク時に適切な容量を提供するためには正確な予測が必要ですが、再エネ発電の変動や社会経済の変化に伴い、予測が難しいことが課題とされています。
また、容量市場の競争の偏りが課題とされています。一部の大手発電事業者が大規模で安定した容量を提供できる一方で、中小規模の事業者や新規参入者は競争において不利な状況が生じています。
さらに、価格設定の透明性や市場の機能向上が求められています。価格形成のメカニズムや報酬の透明性の向上が必要であり、市場の効率性や公正性を高める取り組みが期待されています。
これらの課題への対応が進められることで、容量市場がより効果的に機能し、需要家に安定かつ確実な電力供給を提供できるようになるでしょう。
容量市場のメリット・デメリット
容量市場導入によるメリットと影響を確認しておきたいと思います。
メリット
容量市場をつくるメリットのひとつは、発電量が気候や季節によって不安定な再生可能エネルギーの調整力として必要な電源を確保しておくことで、将来的な再生可能エネルギー電源の主力化に役立てることにあります。
また、発電所を持たない小売電気事業者にとっては電力の調達をしやすくなることにより、事業を安定化させられることもメリットとなってくるでしょう。
そして、小売電気事業者の事業運営が安定化することにより、 電気料金も安定化し電気を使う国民負担の軽減にもつながっていくことも予想されます。
デメリット
大手電力会社と発電所を持たない電力会社との間で格差が拡大してしまう恐れがあることが懸念点でもあります。
大規模発電所を持つ電力事業者は、小売部門で負担はあるものの発電部門での収入もありますが、大規模発電所を持たない電力事業者は、容量拠出金を支払う一方となってしまいます。
2020年7月に最初のオークションが実施され好評された落札価格は予想外の高騰となり、業界は騒然としました経緯もあります。
電力会社の規模や、発電社の所有有無によって、電力会社間での格差が出てくる可能性が指摘されています。
電力ユーザーが容量市場に参加できる「ディマンド・リスポンス」
ディマンド・リスポンス(Demand Response)は、電力ユーザーが需要のピーク時に電力の使用量を調整することで、電力需要と供給のバランスを維持し、電力市場やシステムの効率を向上させる仕組みです。
具体的には、電力ユーザーは需要ピーク時に電力使用を削減することや、自家発電や蓄電池を活用することで電力供給に協力する形となります。
ディマンド・リスポンスはエネルギーの効率的な利用と電力市場の健全な機能維持につながる制度です。 このディマンド・リスポンスについて、どのようなメリットがあるのか、解説していきます。
節電により報酬が得られる
電力ユーザーがディマンド・リスポンスを活用して容量市場に参加する主なメリットは、需要ピーク時に節電することで市場から報酬を得られる点です。
電力ユーザーが自らの電力消費を柔軟に調整し、需要のピーク時に電力の使用を削減することで、電力供給の安定性向上に寄与し、その対価として市場から報酬が支払われます。
これにより、電力ユーザーは節電の実施によって経済的な利益を得ることができます。
社会貢献・地球環境保護につながる
ディマンド・リスポンスを通じて容量市場に参加することは、電力ユーザーにとって社会貢献と地球環境保護を行う手段となります。
需要ピーク時の電力消費削減により、電力供給の安定化に貢献し、発電過程に伴う環境負荷を軽減します。
エネルギーの効率的な利用は温室効果ガス削減にも繋がり、持続可能なエネルギー未来の構築につながり、電力ユーザーは自らの行動によって社会全体にポジティブな影響を及ぼすことができます。
まとめ
容量市場について解説していきました。
電力小売りが全面自由化され、容量市場も設立されました。電力供給に関する状況は、以前と比較して目まぐるしく変化しています。また、企業としても環境問題に対して取り組みを行なうことが、企業価値にもつながるようになってきています。
まずは容量市場の仕組みや現状について理解し、企業としてどのような取り組みが行えるのか検討してみましょう。
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本コラムは2023年12月28日にリライトしております。
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参考資料
くわしく知りたい!4年後の未来の電力を取引する「容量市場」 資源エネルギー庁
容量市場かいせつスペシャルサイト 電力広域的推進運営機関容量市場について 資源エネルギー庁 2023年1月27日
容量市場の概要について 電力広域的運営推進機関