コーポレートPPAに注目が集まる3つの要因
はじめに
2050年カーボンニュートラル実現に向けて、国内でも様々な取り組みが行われています。
特に電力部門では再エネに関するニュースが増えています。
その中でも最近耳にすることが増えたコーポレートPPA。
実は、全世界で見るとコーポレートPPAは増加傾向にあります。
過去の記事で紹介したこともありますが、今回は改めて、コーポレートPPAについてご紹介させて頂きます。※1
コーポレートPPAが拡大する要因
コーポレートPPAが拡大する背景には、主に3つの要因があります。
1つ目は気候変動の問題です。
カーボンニュートラルを筆頭に、世界中でCO2排出量を削減することが課題になっています。これまで同様に火力発電に依存し続けると、温室効果ガスを増加させ、環境問題を促進させてしまいます。環境問題が加速し、世界で自然災害が増えると、工場や店舗の操業に支障をきたします。その結果、消費者が商品を購入することにも影響が出ます。気候変動は、事業活動に大きな影響を及ぼすのです。
2つ目は経済性です。
エネルギー自給率が低い日本は、火力発電に必要な燃料を海外からの輸入に頼っています。コロナウイルスの影響で、私たちは、輸入に制限がかかる場面等を目の当たりにしました。それは、つまり化石燃料の価格変動の影響を受けやすいことを意味しています。太陽光発電をはじめとする再生可能エネルギーは、技術革新も進み、年々発電コストが下がってきています。世界全体を見れば、太陽光発電や風力発電が最も安い発電方法だとも言われているのです。
最後に3つ目は、企業の価値です。
再エネを使うことで企業の競争力を維持・向上させる狙いがあります。Appleは、取引先に再エネ導入を求める等、世界的にも再エネを使っていることが、選ばれる企業の条件になってきているのです。
つまり、気候変動と電力コストという重要な課題に取り組まない企業は、長期の事業継続という観点で信頼性がないとみなされてしまいます。
ちなみに、再エネを調達するだけならば、コーポレートPPAでなくてもよい気がしますよね。実は、コーポレートPPAが注目される理由はほかにもあります。それは、追加性のある再エネという点です。
気候変動を抑制する観点では、新しい自然エネルギーの発電設備を増やして、その増加分によって火力発電の電力を減らせる方法が望ましいです。今ある再エネを使うだけでは、改善は見込めず、よくても現状維持になってしまいます。
コーポレートPPAは、世の中に新たに再エネを生み出します。その結果、発電に伴うCO2の排出量を削減する効果があります。それを欧米では追加性(additionality)と呼び、企業が再エネの電力を選択するうえで重要な条件になっているのです。
上記であげた理由等から、全世界でコーポレートPPAが拡大しています。
日本と海外の違い
日本では電気事業法によって、国に登録した小売電気事業者しか需要家に電力を販売できない制度になっています。つまり、発電事業者が企業(需要家)とコーポレート PPA を結んで再エネの電力を供給することは認められません。海外では発電事業者が需要家に対し、直接電気を供給することができます。ここが日本と海外の大きな違いであり、日本で、海外のようにコーポレートPPAが普及しない理由でもあります。
では、日本でコーポレートPPAを実現するには、どうしたらよいのでしょうか。
それは、小売電気事業者が仲介役になることでコーポレート PPAを締結することで解決します。(発電事業者、小売電気事業者、需要家の3者で契約することになります)
また、国土が広い海外では、発電能力も日本と違いがあります。海外では、コーポレートPPAだけで全量契約ができるケースもあるようです。日本は国土が狭く、発電所を建設するスペースに限界があります。したがって、発電量も限られてしまうのが現状です。
国内でコーポレート PPA を締結する場合には、既存の供給契約をベースにして、コーポレートPPAを追加する方法が現実的だともいわれています。
コーポレートPPAのメリット・デメリット
冒頭のコーポレートPPAが拡大する理由とやや重複しますが、ここでは、メリットやデメリットについてご説明します。
コーポレートPPAのメリット
コーポレート PPA のメリットは、需要家と発電事業者の双方にもたらされると言えます需要家にとって特に重要なメリットは、主に経済性、持続可能性、ブランド価値、の 3 つです。
経済性
- 長期にコストを確定できる
- 価格の変動を抑制できる
持続可能性
- 再エネの利用率が高まる
- CO2排出量を削減できる
ブランド
- 環境への取り組みをアピールできる
再エネの電力を固定価格で長期に調達できれば、電力の使用コストを予測することが可能になり、収益に与える影響を想定しやすくなります。
また、事業の持続可能性やブランドの価値を高められるメリットも大きいです。先ほどのAppleの例もそうですが、最近は投資家や取引先、顧客も含めて企業の持続可能な事業運営を重視するようになってきています。ESGの観点からも、再エネは必須項目であり、中でもコーポレートPPAは、再エネ調達の救世主になりそうです。
一方、発電事業者は企業と固定価格で長期契約を結ぶことによって、安定した収益を確保できます。その結果として、開発に必要な資金を金融機関から調達しやすくなるメリットもあります。コーポレート PPA で安定した収入を得ることで、多数の需要家に対してコーポレートPPAを展開して事業を拡大することも可能になります。
コーポレートPPAのデメリット
反対にデメリット(リスク)もご紹介します。
リスクとしては、発電量、性能低下などがあげられます。
天候リスク
- 発電量の超過・不足
運転リスク
- 技術的な要因による運転停止や出力低下
発電量の超過・不足が生じるリスクをはじめ、発電設備に対する出力抑制の要請や技術的な要因による能力低下が心配されます。
コーポレートPPAには、上記のようなリスクがあることも事実です。特に日本ではほとんど前例がないだけに、導入には慎重な判断が必要でしょう。
ただし、リスクもありますが、メリットも大きいため、海外では、コーポレートPPAが増えています。
メリットが見込める先行投資として、経営陣が決断をすることが望ましいのかもしれません。
※3
まとめ
今回はコーポレートPPAについてお話しました。
コーポレートPPAについては、「言葉は聞いたことがあるが、どんなものかさっぱり分からない」という方もいらっしゃるかもしれません。ですが、2030年や2050年には、コーポレートPPAが当たり前になっているかもしれません。
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参考資料
※1:再エネ調達方法⑤ コーポレートPPA(バーチャルPPA) 株式会社ホールエナジー (whole-energy.co.jp)
※2:分散型ソースの導入加速化に向けて資源エネルギー庁
※3:02-02PPA活用など再エネ価格低減等を通じた地域の再エネ主力化・レジリエンス強化促進事業 環境省