これからの再エネ時代を担う「水素エネルギー」とは?
はじめに
昨年10月、菅首相が「2050年までにカーボンニュートラルの実現を目指す」と宣言されました。それ以来、日本での脱炭素の動きは拍車がかかり、特に温室効果ガスの排出が多いエネルギー分野では、地球に優しいエネルギーを産出しようと、日夜R&Dが進められています。
その中でも、日本が世界よりも技術力が進んでいる分野として「水素エネルギー」が挙げられます。今回は、現在の日本の水素戦略の取り組みと、今後の展望についてお話していきます。
水素エネルギーとは?
水素エネルギーとは、その名の通り水素を燃やすことによって得られるエネルギーのことです。
従来のエネルギーは火力発電によって得られるものが大部分を占めています。
火力発電は石炭や液化天然ガス(LNG)を燃焼することでCO2を排出してしまいますが、
水素による発電は水しか排出しないため、クリーンなエネルギーを生み出すことができます。
また、原料となる水素の調達方法についても多岐に渡ります。※1
以下に、その調達方法の一部をご紹介致します。
褐炭から水素を生成する
褐炭とは、水分や不純物を多く含む、品質の低い石炭のことです。
輸送効率や発電効率が低く、さらに乾燥すると自然発火する恐れがあるので火力発電への利用が限定的です。
この褐炭を燃焼して水素ガスのみ取り出すことで、通常用途が狭い原料から水素を大量に調達することができます。
水を電気分解して水素を取り出す
水(H2O)に電気を流すことで、水素(H2)と酸素(O2)に電気分解する調達方法です。
再エネ電源を用いて電気分解した、製造過程でCO2が全く排出されない水素をグリーン水素と、火力発電などCO2を排出する電気で電気分解した水素をグレー水素と呼びます。特にグリーン水素については、太陽光などで発電し、使い切れなかった余剰電力の使い道として今後期待されています。
水素基本戦略について
日本は2017年、世界で初めて「水素基本戦略」を策定しました。※2
これは、水素を日常の生活や産業活動で利活用する「水素社会」の実現のため、段階的な目標を設定したものです。
具体的には、
フェーズ1.水素利用の飛躍的拡大(策定時~)
定置用燃料電池や燃料電池自動車(FCV)の利用を広げ、水素・燃料電池分野の世界市場を獲得する。
フェーズ2.水素発電の本格導入/大規模な水素供給システムの確立(2020年代後半に実現)
水素源を未利用エネルギーに広げ、従来の「電気・熱」に「水素」を加え新たな二次エネルギー構造を確立する。
フェーズ3.トータルでのCO2フリー水素供給システムの確立(2040年頃に実現)
水素製造に二酸化炭素埋め立て技術(CCS)を組み合わせ、または再生可能エネルギー由来水素を活用し、
トータルでのCO2フリー水素供給システムを確立する。
以上のような段階を経て、CO2フリー水素による水素社会の実現を目指しています。
また、具体的な数値目標として、2030年までに年間30万tの水素を調達、コストは30円/Nm3と設定してます。
現在の日本での取り組み
ここからは、前述の水素基本戦略の達成のための日本の取り組みについて、具体的に見ていきましょう。
水素運搬技術
2019年12月、川崎重工は世界初の液化水素運搬船「すいそ ふろんてぃあ」の命名・進水式を行いました。※3
水素は常温では気体なので輸送効率が悪く、本船はマイナス253度に冷却した液化水素の状態で豪州から日本へ輸送します。こちらは現在、同じく世界初の、水素を輸送する国際実証試験に投入されております。
水素発電
水素発電とは、火力発電の燃料を水素に置き換えたものです。
三菱パワーは2018年、水素混焼率30%のガスタービンの技術を完成させました。※4
これは世界最先端の技術であり、2020年にはアメリカの発電所に導入されることが決まりました。※5
燃料電池自動車と水素ステーション
2019年時点での日本国内での燃料電池自動車(FCV)の保有台数は3695台で、乗用車の総保有台数のうちのわずか0.006%です。※5※6
これは、電気自動車(総数の0.2%)やハイブリット自動車(総数の17.5%)に比べ相当なシェア率の低さです。
この理由としては、価格が高い(ガソリン車の1.5倍~4倍程度)のと、水素供給設備の数が少ないということが挙げられます。水素供給設備については、2021年6月時点で国内147箇所しかございませんが、前述の水素基本戦略では2030年までに900箇所まで増やすと掲げております。※7
水素エネルギーの今後の課題
さて、ここまで水素エネルギーの取り組みやその普及状況を見てきましたが、結論どれもまだ実用的とは言えません。では、今後実用化のためにはどのような課題があるのでしょうか。ここでは大きく3つの課題点についてお話していきます。
課題1.全体的な低コスト化
前述の通りFCVはガソリン車より価格が高いですが、それ以外でも水素周りの設備は軒並み高コストとなっています。水素自体の価格、水を電気分解するための装置、水素を利用するための燃料電池、水素を貯蔵するための施設と、低コスト化が必要なものは非常に多いです。
課題2.水素の製造・輸送
水素自体の低コスト化にも繋がる部分ですが、製造・輸送方法についても、より安全かつより安価な方法を選ぶ必要があります。
製造については、日本国内では化石燃料の調達が困難なため、自ずと水を電気分解する調達方法になります。この場合は、先に挙げた電解装置のコストが問題になります。
また、海外から調達するにも、その輸送技術は完全に確立したわけではありません。中には既存インフラを利用できるものもありますが、消費エネルギーが多かったり、高純度化が困難であったりします。
課題3.水素利活用先の多様化
そもそも水素エネルギーをどの分野に使うのか、どの程度導入するのかといった議論が不十分であるという課題もあります。各分野での導入のための課題は何なのか、それを解決するのには何をすればいいのか、という共通認識を持つことが今後求められてきます。
まとめ
水素エネルギーの実用化には、まだまだ課題が多いのは事実です。
ですが、火力のようなCO2排出がなく、太陽光や風力といった自然エネルギーのように天候に左右されず、原子力での放射性廃棄物も出ないということで、水素エネルギーはカーボンニュートラルの実現のためには無くてはならない存在です。
太陽光は時代遅れ!今の主流は水素!なんていう時代もいつかはやって来るのかもしれません。
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参考資料
※2:水素基本戦略 2017年12月26日 再生可能エネルギー・水素等関係閣僚会議
※3:世界初、液化水素運搬船「すいそ ふろんてぃあ」が進水 2019年12月11日 川崎重工
※4:水素ガスタービン 30%混焼技術が完成 CO2 フリーへの道のり 2018年3月30日 三菱パワー
※5:EV等 保有台数統計 次世代自動車振興センター
※6:わが国の自動車保有動向 自動車検査登録情報協会
※7:水素ステーション整備状況 次世代自動車振興センター