日本の風力発電の今後について
はじめに
近年、2050年の脱炭素社会の実現に向けて、様々な発電方法が行われています。
特に太陽光発電については、一般の需要家でも設備が比較的簡単に導入が可能な太陽光発電の導入は比較的増えています。
その一方で風力発電も2030年のエネルギーの姿を示したエネルギーミックスの電源構成においては重要な位置を占めています。
今回はそんな風力発電の今後の在り方について考えていきます。
風力発電とは
風力発電とは、風のエネルギーを電気に変換する発電方法です。
世界的にみると特にヨーロッパで再エネの主力となっています。
日本においては、導入が遅れているものの、2000年以降からは導入件数が急激に増え、2016年度末で2,203基、累積設備容量は335.7万kWまで増加しています。
特徴として、
①経済性を確保しやすい
大規模に発電できれば発電コストが火力発電なみであることから、経済性を確保できる可能性のあるエネルギー源
②変換効率が良い
風車の高さや羽根の大きさによって異なるが、風力エネルギーは効率的に電気エネルギーに変換できる。
③夜間も稼働可能
太陽光発電と異なり、風さえあれば夜間でも発電すること
などがあげられます。
しかし、日本において導入が進まないデメリットもございます。
主に風の強弱などで出力が左右されることが理由としてあげられます。
この出力変動により、電力系統の電圧や周波数を変動させることになり、需給のバランスに悪影響を及ばしてしまいます。
他にも騒音や強風落雷による破損などの問題も多いことから今後クリアする問題は多い発電方法といえます。
洋上風力発電の可能性
また近年においては、洋上風力に注目が集まっています。
政府が昨年まとめられた洋上風力産業ビジョンにおいて、2040年までに30~40ギガワットの導入を目指す考えが発表させています。
これは原発30~40基分にあたり、現状の洋上風力発電は0.4万キロワットにとどまっているため、20年間で7500倍以上にする壮大な目標となっています。※1
洋上風力発電とは、海洋上に風力発電の設備を作り、海の上に設置された風車を風の力によって回転させて発電する仕組みとなっています。
大きなメリットとしては、
①陸上に比べてより大きな風力を持続的に得られるため、安定的に大きな電力供給が可能になる。
②洋上であるため、騒音や万が一の際の人的被害リスクが低いため、設置場所の確保がしやすい
などがあげられ、
前述の風力発電のデメリットもカバーすることができるため、
風力発電市場において、今後洋上化の動きが活発になってくると予想しています。
日本においてのポテンシャル
今回洋上風力発電において、風力発電供給量の増加率がドイツに次いで2位となったイギリスはとても参考になる事例です。
イギリスが急速に風力発電供給量を伸ばしている背景には、風力発電の洋上化にあるとされています。
この洋上風力発電の導入が進んだ背景には、3つの特徴があります。
①国土面積が狭い
国土面積が狭く、人口密度も比較的高いため、陸上風力発電を導入できる土地が、物理的に少なかった。
②長い海岸線
イギリスは四方を海に囲まれた島国のため、必然的に経済水域が広くなり、洋上風力発電を設置できる場所が多い。
③遠浅の海
洋上風力発電は陸上よりもしっかりと基盤を設置する必要があり、それに適した遠浅の海が多かった。
このように、洋上風力発電は非常にイギリスの環境に適した発電方法となっています。
また、日本も島国で海岸線が長く、国土面積が狭いという点でイギリスと共通している点が多く、洋上風力発電に比較的に向いている環境にあるといえます。
しかし、一点だけ、日本においては遠浅の海は比較的少ないといった違いがあります。
そのため日本においては、支持構造物を直接海底に埋め込み固定する着床式の洋上風力発電装置ではなく、船舶のような浮体構造物を建設し、海底に固定したアンカーにつなぎとめる浮体式の洋上風力発電装置の導入が望ましいとされています。
この技術は世界的に新しいことから実用化に向けた研究も今後の課題としてあげられるのではないでしょうか。※2
まとめ
風力発電の導入に向けては、国としても海域を利用する法律も成立しており、再エネ海域利用法と呼ばれています。※3
洋上風力発電事業の実施のために指定された何点か要件に適合した一般海域内の区域において、その区域内では最大30年間の占用許可を事業者は得ることができます。
今後の政府からの制度的な支援や洋上風力発電の技術の進歩により、風力発電が増加する傾向は間違いないのが現状です。
太陽光発電が注目を集める現在ではありますが、カーボンニュートラル達成に向けて風力発電のポテンシャルは大きなカギを握っているといえるのではないでしょうか。
弊社、ホールエナジーでは、小売りからの再エネ電力調達や太陽光発電の導入などにも柔軟にご対応することが可能です。
もちろん、お客様の状況に合わせて取り組みの方法も多種多様ではございますので、
まずはお気軽にお問い合わせ頂ければ幸いです。
参考資料
※1 洋上風力ビジョン 洋上風力の産業競争力強化に向けた官民協議会 2020年12月15日
経済財政運営と改革の基本方針2021 2021年6月18日 閣議決定
※2 ENEOS、国内で浮体式洋上風力 仏社と共同開発 日本経済新聞 2021年7月7日
再エネの更なる導入に向けた 環境省の取組方針 2021年7月6日 環境省
※3 洋上風力発電関連制度 資源エネルギー庁
地域脱炭素ロードマップ 2021年4月20日 国・地方脱炭素実現会議
※4:環境省 環境影響評価情報支援ネットワーク 環境影響評価情報支援ネットワーク