再エネ調達方法⑤ コーポレートPPA(バーチャルPPA)
コーポレートPPA(Power Purchase Agreement、電力購入契約)は、世界各国の企業が自然エネルギーの電力を調達する手段として採用され年々増加しています。 太陽光や風力などの電力を発電事業者から長期に購入する契約で、新しい自然エネルギーの発電設備から電力を直接調達できるメリットがあります。
本日は、コーポレートPPAについてお話しします。
海外で急増する「コーポレートPPA」
調査会社ブルームバーグ・ニュー・エナジー・ファイナンス(BNEF)によると、全世界の企業による、再生可能エネルギー(クリーンエネルギー)の新規契約規模は、2018年の13.6GW、2019年の20.1GWからさらに伸び、2020年に23.7GWと、記録的な調達量となっています(図1)
出典:BloombergNEF
単位:GW(ギガワット=100 万キロワット)
AMER:北米、EMEA:欧州・中東・アフリカ、APAC:アジア・太平洋地域
そもそもPPAとは、Power Purchase Agreementの略語です。
直訳すると「電力購入契約」ですが、発電事業者側の視点から「売電契約」と呼ぶこともあります。そしてPPAは、発電プロジェクトにおける発電事業者の収入源です。発電事業者が投資を決めるうえでも、プロジェクト・ファイナンスによって資金調達する際にも、重要な契約となります。
さらに、コーポレートPPAは、「コーポレート」が買い手となるPPAのことです。
PPAといえば、かつては大手電力会社を相手方として締結するのが一般的でしたが、最近は、事業会社が買い手となるPPAが、近年欧米の再エネ分野で数多く締結されていて、大手IT企業がデータセンターで利用する電力を確保するため、風力発電所とコーポレートPPAを締結するといった事例もあります。
このように、電力会社ではなく一般の事業会社が発電事業者との間で直接締結するPPAがコーポレートPPAです。
国内での「コーポレートPPA」
日本でのコーポレートPPAの基本スキームは、オフサイトの再生可能エネルギー発電事業者と直接長期PPA(電力購入契約)を締結し、長期的に環境価値の調達先を確保するモデルとなり、物理的な電気は小売事業者等経由で調達することとなります。
ちょっと複雑に聞こえますよね。
その通り、スキームも概念も今までなかったものですので、理解に少し時間がかかるのではないかと思います。
分かりやすく、コーポレートPPAを図式化してみました。
物理的な電気は、発電事業者→小売電力会社→需要家 という流れですが、
環境価値は、発電事業者→需要家 への流れとなっている事がお分かりいただけると思います。
このスキームは、いわゆる「生」の再生可能エネルギーの調達が可能となっております。
更に、追加性のある再生可能エネルギーとして、RE100でも高い評価を得られる再エネとなるため、話題性も高い手法となっています。
また、屋根に載せる太陽光発電設備の様に、スペースや敷地内の遊休地有無を心配する必要もなく、自己託送の仕組みの様に、30分値の需要カーブに合わせて発電量を調整する必要もないため、コーポレートPPAでは、再生可能エネルギーの調達量に物理的な上限がありません。
発電できるだけ発電をして、全て環境価値として調達するという事が可能なため、ある程度まとまった量の再生可能エネルギーを確保する事ができます。
参考コラム
再エネ調達方法④自己託送
国内におけるコーポレートPPAの課題
しかし、国内でコーポレートPPAのスキームで再生可能エネルギーを調達しようとした際は、課題が山積みというのが現状です。
- スキームが複雑
- 再エネ電源の確保が困難(電源が余っていない、発電所の建設場所がない、需要エリアの土地が高い)
- 小売電力会社の選定が困難(コーポレートPPAに対応できる小売電力会社が少ない)
- (小売電力会社が見つかったとして)価格交渉が困難
など、専門知識の必要性に加え、発電所や小売電力会社探しなど、大変な労力がかかります。
さいごに
ホールエナジーでは、アライアンス企業との強い連携により、企業の「生」再エネの調達もお手伝いさせていただいております。
現状、再エネ導入をご相談いただくお客様とお話ししている中で、需要場所の立地条件やコスト、仕組みなど総合的に判断すると、最も現実的に「生」の再生可能エネルギーを調達できる方法として、結果的にコーポレートPPAに着地する事が多くなっております。
アライアンス企業と共に、「生」の再生可能エネルギー調達の現実的な方法を探り、不足分の再生可能エネルギーは、ホールエナジーの再エネオークションを活用していただくという取り組みを進めております。
コーポレートPPAで再生可能エネルギーを導入される際は、調査や各方面との交渉にかかる時間と労力を考慮すると、豊富な専門知識を保有している事業者へご相談いただくことをお勧めします。
コーポレートPPAの情報収集やご検討の際は、
ホールエナジーまでお気軽にご連絡ください。
コラム参考資料
コーポレートPPA実践ガイドブック 2020年9月 自然エネルギー財団